WORKS | 展示作品

中谷芙二子+高谷史郎「CLOUD FOREST- Patio A, Patio B」

(新作/YCAM委嘱作品)

霧、光線、サウンドが表現する、インターフェースとしての「環境」

ガラス壁にかこまれた巨大な吹き抜け構造により、日光や雨、風が侵入する中庭。ホワイエを挟んだ2ヵ所の中庭では、霧、光線、サウンドが、情報技術によって組み合わさる大規模なインスタレーションを体験することができます。
中庭の空間では、人工霧が多方向からタイミングを変えて放出され、それらは周囲の館内外の環境に左右されながら対流となり、多様な形態や様態をつくり出します。さらに、鏡を用いた特殊装置によって太陽光を反射させ、霧の中へと投射していきます。霧の形態、太陽の位置、そして気象状態との関係によって、光学的な効果が時間ごとに大きく変わるため、中庭は、常に異なる情景へと移り変わります。また、2ヶ所の中庭では、場所や高さ、空間容量、鏡の位置が異なるため、それぞれに全く違った表情を見ることができます。空間内には、局所的に音を聞くことができる超指向性スピーカーによる特殊な音響システムが設置されており、観客は作品の中を歩きながら様々に変化するサウンドスケープを体感します。ガラス壁の外側から空間を眺めると、普段の自然の中では見えてこない霧や光の細かな動きを発見することもできます。本作は、外部[自然環境]と内部[人工環境]が共存する中庭の機能を生かし、それらが相互に影響し合うことで生成される新たな空間体験を実現します。観客は、霧の内部/環境内存在となり、外部と内部、自然と人工とを共有するインターフェースとしての「環境」のあり方を発見することができます。

サウンドデザイン : 南 琢也(softpad) / プログラミング : 古舘 健
DMX制御基盤設計 : クワクボリョウタ / レコーディング協力 : 吹田哲二郎

中谷芙二子+高谷史郎「CLOUD FOREST - Foyer」

(新作/YCAM委嘱作品)

音と光が交錯する、大規模で濃密なサウンドスケープ

左右の中庭から自然光が取り込まれるホワイエ。ここでは、音と光の反射に着目した高谷史郎によるサウンド・インスタレーションを体験することができます。ディヴィッド・チュードアが開拓した、環境の反射によるサウンドスケープの発想をもとに、9 台の特殊な音響装置と鏡の床面から構成された本作は、これまで経験したことのない全く新しい音の世界をつくり出します。
約10m四方の全面鏡張りの床面上には9 基の音響装置がグリッド状に設置されています。この特殊な音響装置は、回転式の2m高の四角柱で、それぞれに4台の超指向性スピーカーを備えています。それぞれの装置は、常に変化を与えるプログラムによって、多様なスピードで回転しており、計36台のスピーカーは超指向性音による音の面を複雑に周囲へと作り出します。音源には、山口をはじめとする様々な場所で収録されたフィールド音や、館内の別の場所からのリアルタイムのノイズ音などが用いられており、出力される装置と音の種類は、ゆるやかな規則のもとでランダムに入れ替わります。また、装置の回転によって、ホワイエを囲む壁や階段など、音が反響する場所が多分に変化するため、空間内には、複雑かつ密度のある音響空間が生成されます。床面には、中庭上部の鏡装置による太陽光、ガラスの壁面から透過する自然光と周囲の人工光が反射し、刻々と変化する光の情景をつくり出します。会場を歩く観客は、局所的なサウンドを知覚しながら、YCAMの建築特性を反映し、外部の自然環境までを取り込んだ、音と光の壮大なサウンドスケープを体感します。

サウンドデザイン : 南 琢也(softpad) / プログラミング : 古舘 健 / レコーディング協力 : 吹田哲二郎

中谷芙二子+高谷史郎「CLOUD FOREST-Fog Installation #47784」

(新作/YCAM委嘱作品)

環境と融合し、流動するオブジェ=「霧の彫刻」

YCAMの正面に位置する中央公園を会場に、広大なスペースで展開する中谷芙二子の「霧の彫刻」。本展では、高谷史郎による構造設計が加わり、より精巧な霧の造形を実現しています。
霧は、風向・風力・湿度といった気象の変化に対応して、独特の空間を作り出します。その不定形で流動的な空間は、自然と共生しながら、つねに変化するオブジェとも言えます。本展では、霧の群的な動きが瞬時に移り変わる様相が見えるよう、風向、風力が変化する公園の中央に作品を展開しています。観客は、中庭のインスタレーションとはまた別の、圧倒的な霧の量感を感じながら、環境と融合/流動するオブジェとしての霧を体感することができます。
1970年の大阪万博ペプシ館で初めて構想・発表され、以降40年間にわたって世界各地で公開され、注目を集め続けてきた「霧の彫刻」。本展では、人工霧を発生する装置を、高谷史郎による設計のもとで新たに構築したほか、風力や風向によって霧を制御するシステムを開発しました。それにより、展示会場の環境にあわせて霧を放つ方向や量までを調整し、その動きや造形的な美しさをつくり出しています。本作を通じ、芸術表現と情報技術の融合による、新たな環境創造を探求しています。