三上晴子「Desire of Codes|欲望のコード」

2010年3月20日 – 6月6日
インスタレーション/YCAM委嘱作品
Desire of Codes|欲望のコード(YCAM Re-Marks)

概要

監視技術とネットワーク社会の中に生み出される身体性と欲望の所在について探求する、大規模なインタラクティブインスタレーション。大量のストラクチャーを配した巨大な壁面(蠢く壁面)、天井に吊られた観客を追随する6基のサーチアーム(多視点を持った触覚的サーチアーム)、61個の六角形のセルが集合した巨大な円形スクリーン(巡視する複眼スクリーン)の3つの構成から成る本作には、それぞれの映像、音響などが複雑に影響し合い、様々なインタラクションを生成するシステムが導入されている。YCAM InterLabでは、本作のアーティストである三上晴子の構想のもと、機構設計と制作、サウンド生成システムの構築をおこなった。また、作品のコンセプトをより発展させるため、観客と作品の各構成との間に起こるインタラクションを相互に連動させ、高次のインタラクションを可能にするシステムを構築した。

開発内容

サーチアームの設計/開発

ビデオカメラとプロジェクターを装着したサーチアームは、観客の動きに追随しながら、観客を撮影し、同時に撮影した映像のプロジェクションを続ける。YCAM InterLabでは、クワクボリョウタと共同で、このサーチアームの開発をおこなった。サーチアームを制御するための回路設計とソフトウェア開発をクワクボが担当し、回路とセンサーの通信プロトコル、駆動機構の設計と開発をYCAM InterLabが担当した。
駆動機構の設計にあたっては、搭載したビデオカメラとプロジェクターの天地が反転しないよう、ステッピングモーターとシリンダーサーボを組み合わせた。また、観客がサーチアームに近づくと、瞬時に、そして、正確にサーチアームが反応し、その先端が観客に向くよう、トルクの高い工業用ロボットに使用する部品を採用した。

サウンド生成システムの構築

観客の声や物音、ストラクチャーやサーチアームの機械音といった空間内の音を、会場に設置した超指向性マイクを用いて常時収集し、音圧や周波数成分などの情報とともにデータベースに格納するシステムを構築。さらに、データベースのソースを素材とし、作品のサウンドを加工・生成するソフトウェアを開発した。このソフトウェアでは、作品の各構成(「蠢く壁面」「多視点を持った触覚的サーチアーム」「巡視する複眼スクリーン」)の反応/静止の状態、観客の出す声や物音を検索条件とし、データベースから過去の音声ファイルを引き出して使用する。この一連のシステムによって生成されたサウンドの再生には、8個のラウドスピーカーと4個のサブウーファーを使用。空間全体を包み込み、浮遊感をもたらす音響となるよう、スピーカーをレイアウトし、厳密なチューニングを施した。

映像/音響/照明のインタラクションシステムの構築

観客と作品との関係から生成されるインタラクションのほか、作品の各構成が相互に連動する高次のインタラクションを実現するシステムを構築。本システムでは、作品内の映像/音響/照明のパラメータやトリガーの因子として、「蠢く壁面」における15列のストラクチャーのそれぞれの角度とセンサーの数値データ、「多視点を持った触覚的サーチアーム」におけるシリンダーサーボによる垂直方向角度とステップモータによる水平方向角度の数値データ、「巡視する複眼スクリーン」における61個のセル(単眼)に表示される映像ソースの種類別割合の数値データを常時取得している。これにより、「巡視する複眼スクリーン」の自律的な更新、サウンド生成システムにおける発音のタイミングや、音像移動などのエフェクトの決定、サーチアームやストラクチャーを照らす照明システムのタイミングの決定が実行される。

テクニカルクレジット

作品制作、コンセプト:三上晴子
サーチアーム開発:クワクボリョウタ
複眼映像プログラミング:平川紀道
ストラクチャー開発:竹ヶ原設計
ストラクチャープログラミング:市川創太
特別協力:久保田晃弘、堀口淳史

協賛:株式会社アド・サイエンス、Microvision, Inc.
協力:多摩美術大学情報芸術コース、合同会社パーフェクトロン

YCAM InterLab

テクニカルディレクション、空間デザイン:三原聡一郎
サーチアーム機構設計:大脇理智
音響デザイン、サウンドプログラミング、照明プログラミング:濵 哲史
照明デザイン:高原文江
空間コンストラクション:岩田拓朗、宇野三津夫

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