YCAM Guest Research Project vol.1—プロジェクタカメラ・ツールキット

「Guest Research Project vol.1」では、ソフトウェアの開発や、メディアアートに関する国際的なプロジェクトで活躍するニューヨーク在住の技術者/アーティストのカイル・マクドナルド氏が、2011年8月から11月の約3ヶ月間にわたりYCAMに滞在しました。カイル氏は、対象物を3次元で計測する3Dスキャナー技術を、専門の機械を使用せずに実現するプロジェクト「DIY 3D Scanning」の作者として知られています。YCAMにおける共同研究開発では、この技術を応用し、プロジェクターによる大規模な映像投影に必要とされる技術「キャリブレーション(画像の投影位置や色を補正する技術)」を実現するためのソフトウェア「ProCamToolKit(プロジェクタカメラ・ツールキット)」の開発を行いました。

「ProCamToolKit(プロジェクタカメラ・ツールキット)」について

ProCamToolKitは、プロジェクタとカメラを使った高度なキャリブレーション技術をより利用しやすくする事を目的としたソフトウェアコレクションで、主にopenFrameworksから使用が出来るように開発されています。ライセンスはMIT Licenseで提供され、GithubのYCAMInterLabのページよりダウンロードできます。ソースコードの大部分をモジュール化している為、他の用途のために再利用がしやすく、将来的にopenFrameworksのコアプログラムに組み込む事も視野に入れて制作されています。 ProCamToolKitの構成の概要は以下のリンク先をご覧ください。なおソースコードの中にはYCAM滞在中の実験的な構想から出て来たアイデアを元にした作品例も含みます。

ダウンロードはGithubのYCAMInterlabページから

マパモク/mapamok

Music: “Mass” by Vaetxh

「mapamok(マパモク)」は、今のところ、ProCamToolKitを使用して作られた最もユーザーフレンドリーなアプリケーションです。このアプリケーションを使用すると、投影対象の形状がCGソフトで簡単に3Dモデル化できる場合、もしくは既に3Dモデル化されている場合、非常に短時間のセットアップでプロジェクションマッピングを実現します。この動画ではmapamokを使って、手軽にプロジェクションマッピングを実現するまでの流れを紹介しています。測量とモデル作成に5〜30分、設営とプロジェクタキャリブレーションで5分と非常に短い時間でマッピングできます。mapamokはopenFrameworksで作られ、全てがリアルタイムで処理されているので、インタラクティブなアプリケーションに簡単に取り込む事が出来ます。動画の最後にはmapamokを使ったインタラクティブなサウンド+ヴィジュアル作品への応用例を紹介しています。

mapamokのダウンロードはこちらから、
使用方法をまとめたwikiはこちらにあります。

3Dスキャン + 描画/3D Scanning + Projection

Music: “Hoofbeat” by Dustmotes

骸骨の模型をグレイコードを使用して3Dスキャンし、その情報を元にプロジェクションマッピングを行うまでの動画です。3Dスキャンされたデータは3Dのポイントクラウドデータにデコードされます。これを行うためには事前にカメラとプロジェクタの位置と角度の関係が分かっている必要があります。GLSLシェーダをリアルタイムで編集する場面(動画 0:33〜)では、プロジェクションされているラインの太さを変更しています。その後、正確にマッピングされた骸骨が再び映像に現れます。

シャドウプレイ/shadowplay

Music: “Say It” by kylemcdonald

2つのプロジェクションを完全に重ねることで生まれる映像表現の実験。2台のプロジェクタが反転した色のイメージを同位置に投影した場合、スクリーンは白色に見えます。そこに物体(映像では手や人)が片方のプロジェクタからの光を遮るような位置に入ると、遮られていない方のプロジェクタからの映像を見る事が出来ます。ここでは双方のプロジェクタの映像の投影位置を完全に重ねるために「ProCamToolKit」を使用し、3Dスキャン技術と新しい種類のフィードバックを用いたキャリブレーションテクニックを使用しています。

客員研究員

カイル・マクドナルド|Kyle McDonald

1985年生まれ。ニューヨーク在住。レンセラー工科大学大学院修了。コンピュータサイエンスの学士号を取得し、哲学、コンピュータサイエンス、電子芸術を学ぶ。実験的なノイズやグリッチ研究から、没入型のインタラクティブインスタレーションまで、オルタナティブなセンサーの設計から、コンセプチュアルアートまで、その活動は多岐に渡る。様々なアーティストとのコラボレーションもおこない、アート作品やツールの制作、オープンソース・ソフトウェアやハードウェアの開発などのプロジェクトを展開している。また、オープンソースのソフトウェア開発環境「openFrameworks」の主要な開発者のひとりとして、「openFrameworks」の国際的なコミュニティにも関わりが深い。  http://kylemcdonald.net/

主催:公益財団法人山口市文化振興財団
後援:山口市、山口市教育委員会
共同開発:YCAM InterLab
企画制作:山口情報芸術センター[YCAM]

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