スティーヴ・パクストン「Phantom Exhibition~背骨のためのマテリアル」/同時開催「インターイメージとしての身体」

日時:
2009-05-24(日)-2009-08-31(月)10:00-19:00
2009-04-25(土)-2009-08-31(月)10:00-20:00
休館日:
火曜日(祝日の場合は翌日)
場所:
スタジオB / ホワイエ、2Fギャラリー /
料金:
入場無料
※企画展「インターイメージとしての身体」の会期を、ご好評につき、8月31日(月)まで延長することとなりました。

※展示作品newClear + アレッシオ・シルヴェストリン「skinlides」は、
夏休みワークショップ「ケータイ・スパイ・大作戦」開催のため、下記の日程で一時ご覧頂けません。
皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

 2009年8月13日(木)〜8月27日(木) ※8月16日(日)、8月23日(日)を除く
 一時閉場 13:00-17:00

5月24日(日)13:00-14:30開催、ダンスデモンストレーションのみ要整理券
*公演当日10:00より配布開始

OUTLINE

2つの展覧会で見えてくる
<アート + メディア + 身体表現>の新たな次元。


スティーヴ・パクストン
「Phantom Exhibition~背骨のためのマテリアル」




Phantom Exhibition, Steve Paxton with Florence Corin and Baptiste Andrien (Contredanse). Photo: Contredanse (Florence Corin and Baptiste Andrien)


身体のあらゆる感覚と行為の枠組みを問い直す。
コンテンポラリーダンスとアートが融合した
パクストンの身体の思想、ここに紹介。



YCAMでは、34年ぶりの来日を果たすアメリカ・ポスト・モダンダンスを代表するダンサー/振付家、スティーヴ・パクストンの新作映像インスタレーションを中心に、作家によるデモンストレーション、専門家を招いたレクチャーなどによって、パクストンの身体における思想を総合的に紹介する展覧会を開催します。
現在のダンスシーンに多大な影響を与えるパクストンのメソッドと独自の表現を、映像インスタレーションで体感するとともに、さまざまなイベントによって読みとく本展を通じ、パクストンの活動を1960年代からの社会的、歴史的文脈から紹介するとともに、メディア表現によって発見される新たな身体と空間の現在形を考察します。



「インターイメージとしての身体」

メディア表現によって新たに発見される身体。
ポスト身体の形を考える。


さらに、スティーヴ・パクストン展の開催にあわせ、YCAMが取り組む〈アート + メディア + 身体表現〉のテーマを探求する、3組のアーティストの作品による企画展「インターイメージとしての身体」も開催。
メディア表現によって新たに発見され、作品のなかで積極的に表現される「自己の身体」と「イメージとしての身体」。回帰される二重の身体性=「インターイメージとしての身体」に注目しながら、今日的なメディアテクノロジーと身体の関係性や可能性について考えます。

□展示作品
newClear + アレッシオ・シルヴェストリン「skinslides」
高嶋晋一「Pascal pass scale」
□参考上映
勅使川原三郎「Friction of Time - Perspective Study vol.2」


企画展:スティーヴ・パクストン「Phantom Exhibition~背骨のためのマテリアル」
主催:財団法人山口市文化振興財団 後援:山口市、山口市教育委員会
共催:DANCE DOCUMENTS JAPAN COMMITTEE (DDJC)
助成:日米友好基金、Asian Cultural Council、財団法人セゾン文化財団
企画:山口情報芸術センター[YCAM]
技術協力:YCAM InterLab
キュレータ:阿部一直(YCAM)
デザインディレクション:川上 俊(artless)


*この企画は、全国の芸術機関、施設が連動して開催する「Touch, Contact, Bones Steve Paxton + Lisa Nelson Dance Project 2009.4.26-8.31」の一環としておこなわれます。
主催:DANCE DOCUMENTS JAPAN COMMITTEE (DDJC)
共催:京都の暑い夏事務局、株式会社ワコールアートセンター、東京藝術大学大学院映像研究科、近畿大学国際人文科学研究所、早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 舞踊研究コース、財団法人山口市文化振興財団
協力:公立大学法人青森公立大学、国際芸術センター青森AIR実行委員会(予定)
助成:日米友好基金、Asian Cultural Council、財団法人セゾン文化財団
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NOTE
今回展示するスティーヴ・パクストンのインスタレーションは、パクストンの追求してきた身体の思想を体現する、貴重なものである。従来の一般的なダンスの成立は、身体のオブジェ化によっており、演出家からは振り付けおよびコントロールの対象となり、観客からは鑑賞する視覚の対象となる。ステージ空間の中で相関的に構成された、他者から<見られる身体>こそが、ダンスの基礎と歴史を作っている。しかしパクストンは、そのようなダンスの成立構造を脱構築し、新たなフェイズを生み出した。パクストンにとっては、身体はコントロールされるものではなく、発見していく未曾有の世界であり、自己の身体の感覚とアクションが、どう結びつき、リアクションが形成されるかに瞠目する。その関係性のフィルターによってのみ、外部の世界の様相や重力といった諸条件が、身体的に顕在してくるのである。

あらかじめ存在する、劇場や美術館といった表現空間の制度との相関関係によって、時間・空間が決められていくのでなく、あくまで自己の身体の論理とインターフェースの延長の中に時間・空間を見いだしていく、ここにパクストンの画期的な展開があり、コンタクト・インプロヴィゼーションによって、さらに自己身体の複数化・交換化としての、複数の身体性にまで拡張されることになる。これらの発見と実践は、ポストモダンダンスと東洋の身体技法を、徹底した揺るぎない視点から通過してきた、パクストンならではのユニークネスがなし得た成果ということができる。また今回、5面のスクリーンを同期させたメディアインスタレーションという新しい表現方法を利用することで、ここ20年来のメソードである「MATERIAL FOR THE SPINE 背骨のためのマテリアル」の方法論と思想が、より具体性や物質性を持って、われわれに迫ってくるのを見届けることができるのである。

パクストン展と同時並行して、「インターイメージとしての身体」と題した小企画展を開催する。「身体+メディア」という主題は、きわめて今日的なテーマであるが、それは、<身体化するメディア>という側面と、<メディア化する身体>という2つの側面に展開できるだろう。この両側面がフィードバックすることで、新たな表現やアプローチの発見が加速していくことが重要である。イメージとイメージの存在・潜在の仕方が微分化され、アルゴリズムデザインと表象との新たな関係を再構築するインターフェースとして現れるとき(=インターイメージ)、これまでの認識感覚と意識の編集能力とは異なる時間・空間の次元が、新たな身体感覚を浮上させるだろう。ここでは、ネクストジェネレーションの2組の新鋭アーティスト、newClear+アレッシオ・シルヴェストリン、高嶋晋一と、すでに国際的な高い評価を受けている勅使河原三郎が、高速度カメラを駆使して撮影したオリジナル制作のダンスビデオ(07年YCAM滞在制作作品)を公開する。

パクストンが、ポストモダンダンスを創始した時期は、チャンス・オペレーションやインターメディアが社会的実践として、既存の制度の垣根を破壊し、台頭した時代であった。現在われわれは、その先陣の精神と回帰を受け継ぎながら、行く先の見えない情報メディア社会のシステムのなかで呼吸している。次々に更新されるメディアのプラットフォームによって、相対化される身体性こそ、最も危険な冒険が可能な領域であり、表現のピークレベルとなりうる場所ではないだろうか。

阿部一直/キュレータ(YCAM)

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