山口情報芸術センター [YCAM]では、コンテンポラリーダンスを牽引するカンパニー「ザ・フォーサイス・カンパニー」のダンサー安藤洋子と、第一線で活躍する日米のソフトウェア開発者を迎えて、2010年よりダンスの創作と教育のためのツールを研究開発するプロジェクト「Reactor for Awareness in Motion (リアクター・フォー・アウェアネス・イン・モーション/略称RAM)」を実施してきました。
ダンスとテクノロジーの専門家が、ダンスのある革新的なコンセプトを共有し、それを具体的なツールやワークショップとして発展させていったこのプロジェクトでは、テクノロジーが単なる舞台作品の演出のためではなく、ダンスの一つの本質を捉え、それを伝えるために用いられている点で、画期的なプロジェクトといえます。テクノロジーが触発するダンス、ダンサーの視点からカスタマイズされたデジタルツールとして、ダンスとテクノロジーの実験の歴史に連なる新たな試みを紹介します。
あらかじめ決められた振付をそのまま踊ることではなく、踊りを引き出す空間=環境とダンサーとのインタラクション (相互作用)をダンスとして考えたとき、そこからどんな可能性が見えてくるでしょうか?RAMでは、ダンサーの身体の動きをリアルタイムにキャプチャーするデジタル技術を使って、例えば、身体が上下逆さまになったアニメーションで表示することができます。ダンサーはこのアニメーションを見ながら動くことで、自分と空間との関係を変えたり、拡げたりすることで、ダンスを紡ぎ出していきます。また、ダンサーが自分がいままで無意識に持っていた身体のイメージや感覚を見直すきっかけにもなります。
さらに、このようなダンサーの想像力を刺激する環境をプログラミングを通じてデザインすることで、プログラマーや他のジャンルのアーティストたちがダンスの創作に関わるプラットフォームとして機能することも、RAMの重要なミッションの一つです。
モーションキャプチャーシステム (慣性式・光学式の2方式を設定)、また「Microsoft Kinect™ (以下、Kinect)」などを使用して、ダンサーの動き(モーション)を検出し、環境からの応答を、映像や音をはじめとする様々なアウトプットに変換してダンサーに伝えることが出来ます。これらの処理が全てリアルタイムで行われることで、ダンサーが視覚、聴覚、触覚刺激などの情報を受け取り、次の動きを生み出すルールを自ら創りだしていくことを促します。
RAM Dance Toolkitを用いた作品やプロジェクトの公開 (に伴うウェブサイト及び印刷物の作成)、また、RAMプロジェクトをご自身の媒体でご紹介くださる場合、下記を参照の上、クレジット及びロゴマークをご掲載ください。