ローレン・リー・マッカーシー カイル・マクドナルド「アンラーニング・ランゲージ」

ローレン・リー・マッカーシー+カイル・マクドナルド 新作パフォーマンス「アンラーニング・ランゲージ」YCAMとのコラボレーション

                                    撮影:谷康弘

完全なマシンと不完全な私たち

観客は人間に興味を持つAIによって、ある実験への参加を促されます。

語りかけてくるAIに応える形で、観客同士コミュニケーションをとりながらミッションをこなしていくと、AIが観客の表情、言葉、身体の動きをカメラやマイクを通して検出、分析しようとします。そしてもしもAIが認識してまうと、AIは観客をさまざまな手段で妨害するのです。

現代社会はネットワークやAI技術の高度化などにより、私たちの日常がデータ化、分析され、その結果、個人に向けたAIからの「最適化した」アシストは身近になったといえます。この作品で観客は、AIに認識されないコミュニケーションの方法を他の観客とともに見つける必要性に迫られることで、人間とマシン(AI)の違いについて考えることになります。ときに楽しく、またときにぎこちない体験を通して、AIにはない人間らしさとは何かを即興的に発明させる、AIによる人間の実験場ともいえます。

タイトルに込められているのは、当たり前だと思っている習慣や知識の一部を手放し、新たな学びを得るための空間を空けることの大切さです。普段の生活の中でAIとあまりに密接になった私たちに、人間性が優先されるAIやテクノロジーとはどのようなものであるべきかを問いかけます。

アンラーニング・ランゲージ ハンドアウト

アーティスト

ローレン・リー・マッカーシー

監視、自動化、アルゴリズム化された生活の中での社会的関係を考察するアーティスト。

UCLAで修士号を取得、MITでコンピュータサイエンスとアート&デザインの学士号を取得。

またオンラインでコードによる創造的な表現を学ぶためのオープンソースプログラミン

グ言語「p5.js」のクリエーターでもある。UCLAデザイン・メディア・アーツ准教授。

カイル・マクドナルド

コードを用いて作品を制作するアーティスト。「openFrameworks」のようなアートとエンジニアリングのオープンソース・ツールキットの貢献者であり、アーティストたちが新しいアルゴリズムを創造的に利用するためのツールを開発している。アイデアや計画を完成前に公開し、共有する手法を採用しており、ネットワーク・コミュニケーションと演算をクリエイティブに覆し、グリッチや構造的なバイアスを探り出し、これらの概念を拡張して、アイデンティティから関係性まであらゆるものごとを転倒させるような作品を生み出している。またコンピュータービジョンとインタラクションを探求するワークショップも頻繁に企画している。

  • 会期:2022年11月12日(土)〜2023年1月29日(日)
    • 休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日〜2023年1月3日)
  • 会場:山口情報芸術センター[YCAM]スタジオB
  • 上演時間
    • <土日祝日> - 10:30/11:00/11:30/12:00/12:30/13:00/13:30/14:00/14:30/15:00/15:30/16:00/16:30/17:00/17:30
    • <平日> - 12:30/13:30/14:30
  • 各回入れ替え制
  • 体験可能人数:2〜7人/1スロット
  • 各日会場で整理券を配布し、順番に空いているスロットへご案内いたします。
  • 11月12日〜13日、12月3日〜4日、1月28日〜29日のみ事前予約制となります。
  • 11月12日のみ15時からの開催になります
  • 詳しくはYCAMのウェブサイトをご覧ください。

  • チケット料金(当日券のみ)
  • 一般:500円

= any会員・25歳以下・障がいを持つ方及び同行の介護者1名:無料

ご注意:暗転や激しく明滅する光、大音量の音といった演出があります。また鑑賞のサポートの一環として、観客の作品体験の様子を撮影、記録させていただいております。予めご了承ください。

主催:公益財団法人山口市文化振興財団、公益社団法人全国公立文化施設協会

後援:山口市、山口市教育委員会、ゲーテ・インスティトゥート

助成:文化庁 統括団体によるアートキャラバン事業(コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業)

協力:ライゾマティクス、BACKSPACE Productions Inc.、特定非営利活動法人国際舞台芸術交流センター

共同開発:YCAM InterLab

企画制作:山口情報芸術センター[YCAM]

『公文協アートキャラバン事業 劇場へ行こう2』参加事業

ザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループ「アンインテンデット・エミッションズ」

関連展示 2022年11月12日(土)〜2023年1月29日(日) 10:00〜19:00 ※11月12日(土)、13日(日)のみ20:00まで延長 会場:ホワイエ、2階ギャラリー 入場無料

会場には2本のアンテナと巨大なモニター群が設置されています。このアンテナを使用して複数の無線電波を送受信することで、会場内の観客のスマートフォンなどのモバイルデバイスが持っているW-iFiの「自動サーチ機能(プローブリクエスト)*」を利用して、自動的に共有されるユーザーデータを分析、可視化します。

具体的には、ネットワーク機器やネットワークアダプターに付帯された固有の識別番号である「MACアドレス」を解析することで、デバイスのメーカー名を表示し、さらにはそのデバイスの位置=観客の位置を会場内の地図にマッピング。さらには、観客が以前接続したWi-Fiの名称(SSID)から、YCAMを中心とした約半径5キロ以内の地域で、観客が過去に滞在した場所を推測して表示します。

作品を体験する観客の位置がリアルタイムに取得され、地図上を歩き回る様子は、ユーザーが意図して発している情報ではないにも関わらず、つまりユーザーの明示的な同意がないままに情報を取得している、世界中で採用されているデジタルおよび無線監視のシステムへと、観客の想像力を誘います。

2020年度、 ワークショップ「私はネットでできている?」でも、インターネットの透明性や恣意性、監視、検閲を取り上げました。

YCAMが「Man In the Middle(中間者攻撃)」という技術を使用し開発したアプリケーション「鎖国ブラウザ」によって、ワークショップ内で参加者がおこなう通信にのみ、通信途中にYCAMが割り込み、通信内容の盗聴や改ざんをおこなうアクティビティを実施。このアクティビティによってシステムの裏側にいる人間の存在や意図について、多くの意見が交わされました。

「鎖国ブラウザ」を制作するために、刺激を受けた作品「Men In Grey」(2009〜2014年)の作者であり、1999年から20年以上にわたって、作品制作や展示、そしてワークショップを通じて、ネットワークやマシンに対して啓発をおこなってきたクリティカル・エンジニアリング・ワーキンググループ。

2011年に発表された「ザ・クリティカル・エンジニアリング・マニフェスト」では、「どんなテクノロジーも、それに依存した瞬間に挑戦や脅威になりうると考える。ー中略ー私たちが依存する技術であればあるほど、技術そのものに疑いを持たなければならない*」と宣言しています。技術に対する偏ったイメージや、神秘化を廃し、現在のテクノロジーの実像を伝えることで、私たちに議論の機会を提示します。

  • 自動サーチ機能(プローブリクエスト)

周囲のWiFiを探すために、定期的にデバイスが既に接続したことのあるSSIDを探して、自動接続するための機能。これにより過去に接続したWi-Fiに自動的に接続することが可能となる。

ザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループ

2011年、アーティストとエンジニアのグループが「クリティカル・エンジニアリング・マニフェスト」を発表。ジュリアン・オリバー、ゴーダン・サヴィシッチ、ダーニャ・バシリエフが書いたこの宣言を中心に、サラ・グラント、ベンクト・ショーレン、ジョアナ・モールが参加し、「クリティカル・エンジニアリング・ワーキンググループ」が結成された。

「現代において私達の考え方・話し方・生き方を形づくる上で、エンジニアリングこそが最も影響力のある言語だと考える」で始まるこの宣言は、「批評的なエンジニア」の規範について多くのことを示唆する。「アート、建築、アクティビズム、哲学、発明の歴史」という、意識すべき射程を広範囲に設定し、テクノロジーを注視しながらその存在を常に多角的に検証していく、という使命を述べている。発表から10年以上が経過した現在、18ヶ国語に翻訳され、ハクラボ、博物館、エンジニアリングやメディアアートの学校の壁やテキストに記載されているこの宣言は、今日ますます重要な意義を持っている。

メンバーによる代表作に、Packetbrücke (2012) 、PRISM: The Beacon Frame (2014) 、Deep Sweep (2015) 、Vending Private Network (2018) 、WannaScry! (2021) 。

Newstweek (2011)でアルスエレクトロニカ・ゴールデンニカ、 Men In Grey (2009)で文化庁メディア芸術祭優秀賞、他受賞歴多数。

ZKM、トランスメディアーレ、The Glass Room、MUTEK、The Chaos Computer Congress、テート・モダン、FILE、ヴェネチアビエンナーレなどその作品は世界中の美術館やフェスティバルで展示されてきた。

なお創作と並行して、ソフトウェア無線(Software Defined Radio)、ネットワーク/インフラエンジニアリング、バイオコンピューティングなどをテーマにした、一日から数日に及ぶ集中ワークショップを通じて、彼らの知識を多くの人にシェアしている。

「クリティカル・エンジニアリング・マニフェスト」 (日本語版翻訳 Yosuke Ushigome)  

https://criticalengineering.org/jp

[関連展示] 鎖国[walled garden]プロジェクトアーカイブ展示

関連展示 2022年11月12日(土)〜2023年1月29日(日) 10:00〜19:00 ※11月12日(土)、13日(日)のみ20:00まで延長

※トークイベント開催時はご覧いただけません 会場:ホワイエ、2階ギャラリー 入場無料

インターネットが一般に普及して約20年、情報とインターネットのこれからを考えるYCAMの研究開発プロジェクト「鎖国[Walled Garden]プロジェクト」で開発した2つのワークショップについて、さらに「アンラーニング・ランゲージ」につながるインターネットの今日的なトピックの一つ「監視資本主義」について紹介します。

※トークイベント開催時はご覧いただけません

● 鎖国掲示板

「鎖国[Walled Garden]プロジェクト」や「アンラーニング・ランゲージ」に参加しているアーティスト、作家、研究者からのユニークな質問に答えながら、インターネットやマシン(AI)、情報についての意見やアイデアをシェアするための掲示板です。特別オンライン企画として文筆家、木澤佐登志による「木澤佐登志のワクワクどうぶつ占い」も実施します。

鎖国掲示板/SAKOKU BBS
https://sakoku-bbs.ycam.jp/

[関連イベント] トークシリーズ、ワークショップ

関連上映

  • 2022年10月29日(土)〜30日(日)、11月2日(水)〜4日(金)
  • 会場:スタジオC
  • 定員:100名
  • チケット:一般1300円、any会員・特別割引・25歳以下:800円
  • 本作の関連映画として「シチズンフォー スノーデンの暴露」(2014年)を上映します。
  • その他にも特集上映を予定しています。詳しくはYCAMのウェブサイトをご覧ください。

トークイベント

デジタル監視は社会をどう変えるのか スノーデンの告発から考える

日本で初めてスノーデンへの単独インタビューをおこなったジャーナリスト、また監視の研究者として「監視資本主義」について語るトークイベントです。

撮影:溝越賢

2022年10月30日(日) 12:30〜14:00

登壇:小笠原みどり(ジャーナリスト、社会学者) ※オンラインでの登壇

会場:スタジオC

定員:100名

アンラーニング・ランゲージ公開直前!おすすめ映画

2022年11月3日(木・祝)14:55〜15:25

会場:スタジオC

登壇:今野恵菜*

定員:100名

映画はAIやインターネットを数多く描いてきました。プロジェクトでリサーチした映画を通して「アンラーニング・ランゲージ」の背景を語るトークイベントです。

オープニング・パフォーマンス

「アンラーニング・ランゲージ」の作品空間を舞台に、作品のバックストーリーを演じるパフォーマンスです。

撮影:藤城佑弥   撮影:刑部 準也

2022年11月12日(土)13:00開演

会場:スタジオB

出演:荒木知佳、長沼航(ヌトミック、散策者)、福留麻里、宮﨑萌美(劇団シバイヌ) ※50音順

鑑賞無料(要申込)

定員:90名


オープニングトーク

マシンと見る・聴く

アーティストが情報学研究者とともに、マシンとの出会いが示唆する人間のコミュニケーションや創造力、これからのAIやインターネットについて語ります。

2022年11月12日(土)14:00〜16:00

会場:ホワイエ

登壇:ドミニク・チェン(情報学研究者)、ローレン・リー・マッカーシー、カイル・マクドナルド

参加無料(要申込)

定員:80名

日英逐次通訳あり


トークイベント

クリティカル・エンジニアリングとは

ザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループとして、批評者としてのエンジニアをリードしてきたバシリエフとショーレン。その活動を紐解きます。

2022年11月12日(土) 17:00〜19:00

会場:ホワイエ

登壇:ダーニャ・バシリエフ(ザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループ)、ベンクト・ショーレン(ザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループ)、三浦陽平*

参加無料(要申込)

定員:80名

日英逐次通訳あり


トークイベント : 日本のインターネットの変遷といま

私たちが日常的に接するインターネット。それはなぜ現在の形になったのか。日本での登場から今日まで、多彩なカルチャー事象からインターネット受容史を語ります。

2022年12月3日(土)14:00〜15:30

会場:ホワイエ

登壇:さやわか(評論家、漫画原作者)

参加無料(要申込)

定員:80名


クロージングトーク : 監視資本主義のその先へ-インターネットの未来

2020年度「鎖国[Walled Garden]プロジェクト」でアドバイサーを務めたマトゥ、そしてアートを軸に多岐にわたる活動をおこなうテユンがインターネットの未来について語ります。

  • 2023年1月28日(土)13:00~15:00
  • 会場 : ホワイエ ※配信あり
  • 登壇 : スリヤ・マトゥ(アーティスト、エンジニア、ジャーナリスト)、

    チェ・テユン(アーティスト、エデュケーター、オーガナイザー)※いずれもオンラインでの登壇

  • 参加無料(要申込)
  • 定員:80名
  • 日英逐次通訳あり


サンカクトーク

作品と自分、他者の三者を行き来しながら対話をおこなう参加型イベントです。

  • 2022年11月13日(日)、12月3日(土)、12月4日(日)
  • 2023年1月29日(日)
  • 各回16:00〜18:00
  • 会場:ホワイエ
  • ナビゲーター:山岡大地*、今野恵菜*、原泉*
  • 参加無料(要申込)
  • 定員:20名
  • 対象年齢:10歳以上


ワークショップ : ネットにくらす、わたしのひみつ

情報の発信者と受信者、双方の立場から安全なインターネットを考えるワークショップです。

  • 2022年11月23日(水・祝)、12月10日(土)、12月11日(日)
  • 2023年1月21日(土)、1月22日(日)
  • 各回13:00〜16:00
  • 会場:インターネット
  • ナビゲーター:山岡大地*、今野恵菜*、原泉*
  • 参加無料(要申込)
  • 定員:8名
  • 対象年齢:10歳以上


ギャラリーツアー

プロジェクトに関わったスタッフたちと作品をめぐるツアー。ザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループと1年間活動をともにしたYCAMのスタッフが制作のエピソードを語ります。

  • 2022年11月27日(日)、2023年1月28日(土)
  • 各回16:00〜16:40
  • 会場 : ホワイエ
  • ナビゲーター : 山岡大地*、今野恵菜*、原泉*、三浦陽平*
  • 参加無料(要申込)
  • 定員:20名
  • 対象年齢:10歳以上

*…YCAMスタッフ

関連イベントの申し込み方法はYCAMのウェブサイトをご覧ください。

www.ycam.jp