人間の最も根源的で創造的な行為「あそび」と、それを引き出す「もの」。このテーマをもとに「Think Things」では、展覧会そのものを「実験と創造の場」と捉え、来場者自身がYCAMの研究開発のサイクルに参加する仕組みづくりを目指します。「あそび」についての知恵がいかに創られ発展していくのか、会期をとおしてその生態系を読み解いていきます。来場者によって生み出されたオリジナルのあそびやツールを収蔵、展示し、実際にあそべる場を、YCAM館内のホワイエやスタジオに設置。人から人へあそびのアイデア自体が流動的に生産(考え、つくり)→分解(試して、あそび)→再創造(記録して、共有)されていく場を、来場者と共につくりあげます。
YCAMではこれまで、アート作品や、舞台作品、ワークショップをつくるために、さまざまな装置やツール、ソフトウェアを独自に開発してきました。そして、それらの成果の多くを制作方法や、必要な部品のリストとともにインターネット上で公開しています。こうした「知のオープン化」の活動は、YCAMと世界中の人を結びつけ、アート表現だけでなく、農業や福祉、スポーツやデザインといった異なる分野で新たな知識の共有と進化が生まれるきっかけとなっています。「YCAM OPEN LAB」では、アーティストや研究者だけではなく、YCAMを訪れる多くの人が、こうしたクリエイションの循環に参加し、共に考えながら創造性を高め合える場づくりを提案していきます。
YCAMにおけるオープン化の試み
山口情報芸術センター[YCAM]では、これまでいくつかのプロジェクトにおいて、成果をオープン化*してきました。
プロジェクトの成果はWEBサイトにて公開しています。
*オープン化 = 第三者が一定の範囲で自由に利用できるように公開すること
http://www.ycam.jp/archive/
「Think Things」は、YCAM館内のホワイエやスタジオのスペースを連続的に使って展開します。
ホワイエでは、来場者によって生み出されるオリジナルのあそびやツールを記録し、共有することができる
ブースや、新しいあそびのアイデアを形にできる工房などが登場するほか、スタジオBでは、実際に試して、
あそぶことの出来るプレイグラウンドが出現します。
わたしたちを取り巻く無数の「もの」と、その意味を読み替え、新たな使い方の発見を促す「あそび」。Think Thingsが掲げるこのテーマのもと、空間構成を担当した403architecture [dajiba]は、社会の変化によって生まれた隙間や余剰、つまり「あそび」に着目し、山口市内の廃校や、使われなくなった公民館などから集めた、机や椅子、事務棚などを転用して、プレイグラウンドや受付などを組み上げました。彼らが「マテリアルの流動」と呼ぶ、独特の手法は、単純な「もの」の移動だけを指すのではでなく、意味や機能、記憶を流動することで生まれる新たなコンテクスト(文脈)を空間の中に紡ぎだします。
Think Thingsでは来場者によって生みだされたオリジナルの「あそび」を「あそログ」と呼ばれるあそびの仕様書に記録し、展覧会場、そしてインターネット上の特設ウェブサイトへと収蔵していきます。
まるで進化しつづけるあそびの図書館のように、この「あそログ」の制作や引き出しを通して、あそびという知恵を来場者全員で創造することを目指しています。
またこの創造と共有の連鎖反応をより促進するために、生み出されたあそびを記述した「あそログ」に対してパブリック・ドメインにすることができるツールであるCC0※を採用しています。
会期を通して成長していくあそびのアイデアの生態系は、自分のアイデアを他の人に共有することで生まれる共創の可能性を実験する試みとなります。
※CC0とは
インターネット時代のための新しい著作権ツールで、制作物について有している著作権やそれに隣接、関連する権利を全て放棄し、公共財(パブリック・ドメイン)とすることができるツールです。
あそびの発展を促すオリジナルツール
YCAM InterLabが作成した、遊びの発展を促す非常に根源的なメディアツールが会場内に展示されています。
ここではその一部をご紹介します。