2009年8月28日 – 30日
演劇/YCAM委嘱作品
PARK CITY(YCAM Re-Marks)
劇作家、演出家の松田正隆(マレビトの会)と、写真家の笹岡啓子(photographers’ gallery)のコラボレーションによる演劇作品。戦後、公園を中心に復興した都市「広島」をテーマにした本作では、「距離」と「時間」をキーワードに、客席をも巻き込んだ様々な演出がなされた。舞台空間を遠くから俯瞰し、同時に俳優を間近に見るような鑑賞スタイルを構想した松田の演出に対し、YCAM InterLabは、客席を3階のみとし、個々の席に舞台上の映像と音声を中継する小型モニターの設置を提案。このアイデアを実現するにあたり、モニターを設営するための機構設計、配信システムの構築、映像と音声出力のためのソフトウェアの開発をおこなった。
舞台上にある複数のビデオカメラからの中継や、あらかじめ舞台や広島などで収録した映像素材を、全客席に設置したスピーカ内蔵の小型モニターに出力するため、独自の配信システムを構築。異なる映像と音声を、安定して同時配信するために、UHFを利用したテレビ放送と同様の通信方式を採用した。また、本作の巡回公演を視野に入れ、設営の効率化についても検証した。とくに、モニタースタンドの設計にあたっては、様々な劇場の客席に設置できるよう、座席の形状を考慮し、制作をおこなった。
作品のシーン展開に合わせて、映像と音声を正確に切り替えるため、ビデオマトリックススイッチャーとオーディオミキサーを同期制御するソフトウェアを開発した。ビデオマトリックススイッチャーには、舞台上に設置した7台のビデオカメラからの映像と、事前に収録した映像の計12チャンネル分を入力。オーディオミキサーには、映像素材に付随する音声のほか、舞台上に設置した1本のガンマイクと、10人の役者に取り付けたピンマイクの音声など、約20チャンネル分を入力。ソフトウェアによって、多数のソースの中から、出力する映像と音声をシーン毎に指定し、フェードイン/フェードアウトなどの複数のパラメータを付随してプリセットとして保存/切り替えることが容易にできる。そのため、制作段階における演出の変更にも随時対応することが可能となった。
作・演出:松田正隆
写真:笹岡啓子(photographers’ gallery)
音響:荒木優光
衣裳:堂本教子
ドラマトゥルク:田辺 剛
演出助手:米谷有理子
衣裳アシスタント:片山涼子
機材協賛:AVOX
モニター配信システム:伊藤隆之
モニタースタンド設計:大脇理智
映像・音声制御ソフトウェア開発:濵 哲史
舞台監督:岩田拓朗
舞台:宇野三津夫、Clarence Ng(Esplanade)
照明:高原文江
音響:伊藤隆之、西村悦子
映像:大脇理智、三原聡一郎
映像撮影、アーカイブ:丸尾隆一