「未来の伝統芸能を語り継ぐ」
ワークショップ&コンサート

講師:現代作曲家 三輪眞弘
日時:
ワークショップ
2005年5月3日(祝)13:00〜16:00
2005年5月4日(祝)13:00〜16:00
2005年5月7日(土)10:00〜14:00
コンサート
2005年5月7日(祝)14:00〜16:00
参加者:15名
対象:中学生以上

何とも不思議なタイトル?

第14回芥川作曲賞受賞、IAMAS(岐阜県立情報科学芸術大学院大学)教授、「方法主義」同人、「フォルマント兄弟」の兄、などたくさんの顔をお持ちの現代音楽家・三輪眞弘さんを講師としてお招きし、音楽という時間を音によって組み立てていく芸術から、「時間」について読み解いていくワークショップを開催しました。

このワークショップは、既存の概念に捕われない新しい方法での作曲・演奏、を体験してもらおうという試みです。これまでの西洋音楽は、五線譜に音符を記していくことが作曲であり、その楽譜をもとに楽器を使って再現するのが演奏でした。一方、三輪さんが提唱する「逆シミュレーション音楽」では、音符を記した楽譜はなく、演奏者が実行していくルール(「演算システム」と呼ぶ)が記された譜面をもとに、身体を動かすことによって、演奏するその場で楽曲が生成されていきます。
言葉で聞いただけでは何とも「?」な感じですが、コンサートを含めた3日間のワークショップを通して、「蛇居拳算(じゃいけんざん)」()という演算システムをもとに山口に伝わる伝統芸能を空想し、新しいパフォーマンス作品を制作・実演してもらいました。

ワークショップ初日、会場となったスタジオAに集まったのは、三輪さんのファンとして島根県からやってきたエレクトーンの先生、「シミュレーション」という言葉にひかれてやってきた人、地元の演劇活動家、数学を専攻している大学生など、15人。多彩なバックグラウンドを持った顔ぶれで、これからの3日間、何が生まれるのかとても楽しみです。
まず始めに、なぜ、伝統的な西洋音楽の作曲方法を体得した三輪さんが、この「逆シミュレーション音楽」を追求することになったのか、ワークショップのタイトル「未来の伝統芸能」とは一体何なのかなど、三輪さんからのオリエンテーションが行われました。伝統や文化は、長い時間をかけて語り継がれ、その時間の蓄積の中で洗練されていきます。例えば新しい作曲方法、また楽器そのものの進化をとってみても、この時間の蓄積の上に作られています。では、今、ゼロから始める作曲とは何なのでしょうか?

 

蛇居拳算を元にした作品の体験

この問いを深く考えるために実際に行われたパフォーマンス作品「またりさま」を体験してみることになりました。8人が輪になりそれぞれがどちらか一方の手を前者の肩にのせます(初期値の決定)。自分が右肩左肩どちらにのせているか、また後者が自分のどちらの肩に手をのせているかが、次の状態(五線譜で言えば次に記す音符)を決める2つの要素となり、あるルールに従って8人が順番に前者の肩をたたくことを繰り返します。右手と左手にはそれぞれ、カスタネットと鈴を持っているので、肩をたたくたびにどちらかの楽器が鳴ります。このしくみでは、作曲家は演奏者が繰り返す行為のルールを決め、演奏者は決められた単純なルールを繰り返せばよいということになります。ここには、作曲家による恣意的な音選びはなく、また、演奏者にとってみても、ピアノやバイオリンなど楽器を演奏する特別な能力は必要ありません。
また、この「またりさま」とは架空のマタリ地方に伝わる伝統芸能として語られる(演奏する)意味を持っています。

「逆シミュレーション音楽」とは何か。
人間の歴史上、過去にもしくは未来にあり得るかもしれない、土着的伝承芸能を空想し、その物語から、要素だけを抜きだし、コンピュータシミュレーションによって数的構成ルールに変換します。次に、それを人間が生身の身体で実行し、音楽として再現されていくというものです。

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