作品制作
ワークショップ参加者のみなさんは、山口に伝わる伝承祭礼行事「陶の腰輪踊り(すえのこしわおどり)」「鷺舞(さぎまい)」をヒントに物語を構成し、蛇居拳算のシステムを元に2作品を作りあげていきます。
ひとつは子どもたちの遊びとして伝承されていることを想定した「しゃぐまさま」。6人で小さな円をつくり、1人が円の中心に立ち、内と外で交互に演算しながら立ち位置を交換していきます。演算には3つのポーズがともない、それが「鷺」「子ども」「漁師」のどれかで、勝ち負けがあります。
もうひとつは、鎮魂と五穀豊穣の祈りとして水口村で伝承される祭礼行事「水口鉦踊り(みなくちかねおどり)」。鉦と太鼓を打ち鳴らしながら、2つの円を十文字に移動していきます。
2日間という短い時間の中で、三輪さんや主催者が想定していたもの以上の、レベルの高い作品ができあがりました。
コンサート
5月7日に行われたコンサートでは中部地方を拠点に活動する「逆シミュレーション楽団」による蛇居拳算を元に作られた4作品の再演と新作3つ、それに、ワークショップ参加者によって作られた2作品が披露されました。
正方形に組まれた舞台ではパフォーマーが呪文のようなものを唱えながら場所を移動していきます。観客にとってみれば、最初は何が行われているのかわからず、一般的なコンサートとはずいぶんかけ離れた様子に戸惑ったかもしれません。しかし、しばらく見ていると一定の運動が規則的に繰り返され、まるで終わりがないようなこの舞台に美しさを感じ、何か特別な儀式の現場を目撃した当事者として、従来の音楽鑑賞とは全く違う感覚を覚えたのではないでしょうか。
今回山口で行ったワークショップは、2004年にせんだいメディアテークでも行われた、全国で展開されている「逆シミュレーション音楽」の活動の一つです。
現代音楽作曲家・三輪眞弘氏の取り組みは、現代音楽の世界から見れば一線を逸したゲリラ的なものと考えられるかもしれません。しかし、三輪氏は、私たちに新しい音楽体験(作ること、演奏すること、鑑賞すること)を提示してくれます。
コンサート終了後に、子供たちが「しゃぐまさま」を真似ている光景を目にしました。参加者のみなさんを始め、コンサートに足を運んでくれたみなさんに、過去から未来へ、長い歴史をかけて変化し紡ぎ出され続ける音楽の貴重な一幕を提供できたのではないでしょうか。
※蛇居拳算
2004年せんだいメディアテークで行われた「架空の郷土芸能つくりますワークショップ」の際に作られた演算システム。
「グー」「チョキ」「パー」の3つの状態を持ち、隣の人と自分の状態の差から循環的に次の状態を決定していく。
演算主(赤丸)は→演算相手の状態を較べて、違う場合はそのどちらでもない状態に変わり、
同じ場合はそのままの状態を持続する。
これは3つの状態(0,1,2)を持つ2つの変数(x,y)の間で行われる
x=(6-(x+y)) mod 3
というコンピュータ・プログラムの代入式で表されるものである。
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