WORKS

メディアテクノロジーを駆使した新しいスタイルの建築展

「Corpora in Si(gh)te」では、YCAMを中心とした敷地全域 [館内、中央公園] に、多数のセンサーを付設したメッシュネットワークを形成し、リアルタイムの環境情報 [気温、明るさ、風向、音・ノイズetc.] を広範囲に収集・集積していきます。そのデータ解析をもとに、特殊な結節法則によって構造化される不可視の建築が、リアルタイムプロセッシングによって、館内・野外に生体のように成長または減退しながら生成されていくというプロジェクトです。

この〈情報建築体〉は、情報/建築の各結節点 (ノード) から、自らをノーテーション (空間表記) する知覚ポイントを持つことによって、時間軸に沿って建築全体を多様な形態 (Corpora) へと変容させていく独自の空間認識とシステムを内在しています。Corporaは、ここでは総体を構築していくシステムとして作動します。環境に生息するかのような建築のディテールの変化は、館内のいくつかのポイントからAR (オーギュメンテッド・リアリティ/強化現実) 技術により、実風景に重ねられた (オーバーラップ) 映像として、観客に向けて視覚化されます。

システム

「Corpora in Si(gh)te」において、ソフトウェアにプログラムされている自律する構造結節点 (ノード) は、空間内のひとつの主観的視点ともなり、常に周囲の構造結節点どうしの関係を調整し、変化する環境情報を元にして、自らの複製を空間に新たに増殖配置したり、自滅したりしていきます。また、結節点自身をとりまく局所の空間に対して、常に再設計行為が繰り返されます。このようなプロセス全体が、「Corpora」というタイトルが象徴的に示唆する「自律生成による総体」という状態を作り出します。

この局所的視点と総体的視点を行き来する状態は、オーディオビジュアルによって鑑賞者に表示 (アウトプット) されています。これは、プロジェクトのベースとなっている発想である独自のノーテーション (空間表記法) (*1) と「AR (強化現実) 」 (*2) を組み合わせたものになっており、一般的な建築物の捉え方である「〈外部視点〉からの客観的コントロール」に対立する、〈内部視点〉からのアプローチ、すなわち「内在する多数主観からのボトムアップ的な建築の全体/部分のコントロール」を解明していく手がかりとなります。

*1 「ノーテーション (空間表記法) ; super-eye」
全方向的な捉え方であり、自己の位置、表記の基点、ゼロポイントを周囲の逆投影として表しています。ゼロポイントを取り巻くすべての対象物の方向と距離が、明快な方程式によって変換表記されます。これは対象物を外側から捉えるのではなく、内部から捉える究極の主観的視点 (super-eye) といえます。

*2 「AR (強化現実) /Augmented Reality」
YCAMの外に複数台設置された各カメラが、YCAMの外観を同時に撮影し、そのリアルタイム映像に、Corporaの生成構造の演算の映像がオーバーラップされます。展示空間 (スタジオB) では、外部カメラからのリアルタイム映像に、Corporaの各部分の生成の様子が多角的にプロジェクションされます。


入力情報

ワイヤレス・メッシュネットワーク (30ポイント以上) の小型の小消費電力ワイヤレスセンサを館内およびYCAM前の中央公園に配置し、それぞれがデータを送り合い、演算コンピュータに送信されます。温度、光の強さ、音・ノイズのレベルなどが建築空間にリアルタイムに反映されていきます。

風向・風速計



Corpora in Si(gh)teの構成
メッシュネットワークのうちひとつは風向・風速計に接続され、敷地内の風がリアルタイムに計測されます。

外部カメラ



AR (強化現実) による仮想構造生成と外部カメラからの映像の重ね合わせ
YCAMの状況を、3カ所以上のポイントからリアルタイム撮影し、AR (強化現実) のソースとして再構成します。


内部プロセス

構造結節点 (ノード)



空間表記法super-eyeによるYCAMおよびYCAM周辺の表記
自律する構造結節点は、空間内のひとつの主観的視点であり、それ自身がsuper-eyeという超主観的ノーテーションを持っています。そのノーテーションに基づき、構造結節点は自身の感知範囲をもっており、その範囲内の構造結節点が参照し合って結びつき、構造を形成していきます。このプロジェクトでは、建築家の空間操作を裏打ちする最重要なものとして、建築が展開される空間において一時的に表象され思考される場を〈図面制作=表記法〉として捉え、そこにおいての空間操作に対するノーテーション自体の解体/改変/実験を試みています。この一連の作業は、全方向/極座標的/主観的な表記法の実験/プログラミングとしてアプローチしています。(その方法はdNAでこれまで発表されたプロジェクト ;「なめらかな複眼 super-eye」、「2 Skins -Architecture without Building」、3次元音響システムを使ったインタラクティヴ・インスタレーション「dqpb: dynamicquadruple phonic building」などでも一貫して試みられています。)

生成ルール

Corporaの生成ルールは、セルラオートマトン、ライフゲームなどの方法や思考をベースにしています。構造結節点は、各環境情報 (風に対する抵抗による方向、温度の高低による高さ方向の角度、明るさによる平面的な広がり、音・ノイズの大小による存在確立) によって変化させています。 同時に周囲との構造結節点を捉え、過密、過疎、自立の可能/不可などのケースを局所的に分析・判断し、部分が自己複製を行ったり、反対に自滅したりします。


インスタレーション

スタジオB

super-eyeによるノーテーションによって、YCAMおよび生成するCorporaの全体像を、大画面によるプロジェクションによって体験することができます。スタジオの中央にはリアルタイムの環境情報と各サイトのCorporaの生成情報がディスプレイされて情報検索できます。また野外のいくつかの選択されたビューポイントからのAR (強化現実) による、現在のCorporaの状況と実風景の関係も映し出されています。

ホワイエ

ホワイエで環境情報から一定時間生成されたCorporaの構造体をベースモデルとし、そこからヒューマンスケールに対比させる形で物質的に組み立てたCorporaオブジェが展示されます。人間の身体に対して、Corporaが実際に作り出す空間がどのように直感的に捉えられ、また影響を与えるかを体験することができます。

ギャラリーおよび館内

館内公共空間のいくつかのポイントに、AR (強化現実) による、その場所からのCorporaと実風景が重なったリアルタイムの映像をディスプレイし、変化の様子を見ることができます。

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