プロジェクトの流れ 2004年5月〜2005年3月の活動
2004.05メンバー募集開始
2004.06.20佐藤時啓アーティストレクチャー
2004.07.02「ルチーダフレンズ」結成
2004.07.02ボランティア研修
2004.07.20-10.26「obscura machina (オブスクラマキナ)2004」完成・展示
2004.07.21-07.25「かぶるカメラをつくろう」ワークショップ
2004.08展覧会へ向けて試行錯誤
2004.10.02アートふる山口出展「でッかいカメラに入ってみよう!!」
2004.10.03ワンダリングカメラ撮影 in 秋吉台・千畳敷
2004.11.03広報紙『ルチーダニュース』完成
2004.11.07ピンホールカメラ制作研修
2004.11.14現像研修 第1回
2004.11-2005.01まち歩き
2004.12.04ピンホールカメラで路地を撮影
2004.12.05現像研修 第2回
2005.01.26-02.11佐藤時啓滞在制作
2005.02.11-03.13展覧会「"pin-holes" project in yamaguchi 針穴図像 -光の間-」
2005.02.11広報紙『ルチーダニュース2号』完成

佐藤時啓アーティストレクチャー

2004年6月20日(日)14:00〜16:00
山口情報芸術センター 1階ホワイエ

「カメラオブスクラプロジェクト」では、コラボレーターというかたちで、一般市民のボランティアが、アーティストと共に活動を行ってきました。アーティストレクチャーは、市民とアーティストの一番最初の出会いの場。「表現:見ることと見られること」というタイトルで佐藤さんのこれまでの活動と、今後行っていきたいことがレクチャーされました。レクチャー後、アフターミーティングと称して、活動に参加したい人と佐藤さんが話し合いができる場を設けました。

いつの間にか佐藤さんの世界に・・・

ある日、YCAMのホームページで市民ボランティア募集という情報を知った。その頃、新しい活動を始めたいと思っていた私はこの企画に興味を持った。まずはアーティストレクチャーで佐藤さんの話を聞き、ボランティアに参加しよう、そう決心してレクチャーへ足を運んだ。

レクチャーでは佐藤さんが撮影された写真や、活動を記録した映像を見ながら進められた。佐藤さんは本当に自分がやりたいことを実践されている方だった。写真もとるし、人が入ることができるカメラも作る。ときには井戸だって掘ってしまう。一見バラバラに見えるが、どのような活動であっても作品の大切な要素として「人と関わること」が中心に据えられていた。

数ヶ月後に山口にお目見えしたワンダリングカメラの姿も、ここで見たのが最初だった。今では可愛くみえるワンダリングカメラだが、あの頃は「車で引っ張るカメラもあるんだ!」と映像を見てただ驚くばかり。これが山口に来るんだ、と心を躍らせていた。

写真に興味はほとんどなかった私だが、レクチャーを聞いている内にいつの間にか佐藤さんの世界に引き込まれていた。この人と一緒に活動したい!そう素直に思えた。私はこのアーティストレクチャーで、ボランティアに参加することを決めた。(S.A)

一年に渡る活動の始まり

蛍舞う季節に始まった佐藤先生他20数名のルチーダフレンズ。長門市で参加募集のパンフレットを見つけたのが始まり。市内市外問わず、東京芸大の先生が講師!プロの感性に触れられる。ためらわずに申し込む。

期待を胸にいよいよ当日。ホワイエにて先生の紹介、作品の説明。ピンホールカメラで写された東京の風景。昼間なのに露光の関係で人も車も消滅。夜の新幹線ガード下、それらにペンライトとミラーの反射する光が取り入れられ、点と線で不思議な空間を生み出している。また、ワンダリングカメラで写された特大の韓国、ヨーロッパのランドスケープ。

場所を変え、希望者のみによる今後の制作活動、日程等、話し合いに入る。具体的な制作は動きの中から見えてくるでしょう。ピンホール主体かデジタルカメラによる路地の再現…。気楽にやりましょう、と今迄自分の知っているアーティストと違い自由な雰囲気にこれからの活動が楽しみになってきた。

最終的にボランティアに申し込んだのは23名。佐藤さんの言われた山口の特色、町並みの色(ヘイ、カベ、レンガ)、新旧が渾然と解け合い、調和している。屋根越しに見える山々に囲まれ、町のど真ん中を流れる一の坂川でホタルを観賞出来るなんて、こんな所ないですよ、と誉められ、あらためて山口の良さを見直す。これをどう作品に反映していくか、目標が明確になる。

佐藤さんが感動したホタルの写真を、偶然にも持参したのは私でした。不思議なつながりで関西から九州まで、見ず知らずの人たちと過ごせた1年の始まりでした。(M.H)

コラボレーターチーム、「ルチーダフレンズ」の誕生!

佐藤さんと初めて出会ったのは、2004年2月。防府市で行なわれたカメラオブスクラをつくる教員・美術館関係者向けのワークショップでした。「光をキャッチするんです!」「真っ暗な部屋の中に、小さな穴があくと像が逆さまに映る???」「えー、どうしてどうして?? 」胸をわくわくさせつつも、よく知らないアーティストの話を聞いて、何で映るのかわからずに納得がいかないまま終わった時間でした。 実はその前の10月、アーティストの名前だけを聞いていました。縁というものは、不思議なものです。2004年5月、その佐藤さんに再会し山口のまちを一緒に歩きました。「山口のにおいがする」「蛍がこんなまちの中にいる!」蛍の光は、佐藤さんの「光と呼吸」シリーズの写真に似ていました。

6月、念願かなってカメラオブスクラプロジェクトのアーティストレクチャーが行なわれました。たくさんの方にレクチャーを聞いていただきました。レクチャーが終わった直後、蛍の写真を持った一人の男性に出会いました。「佐藤さんにこの写真を見てほしい!」もちろん一緒に活動するルチーダフレンズのメンバーとなりました。

レクチャーの後、アフターミィーティングが行なわれました。一緒に活動をしてみたいという人が顔をあわせ、アーティスト佐藤さんの話を聞きます。質問などフリートークをしてメンバーになるかを決めます。

カメラオブスクラプロジェクトが立ち上がるまでの簡単な経緯に続き、アーティスト佐藤時啓さんから自己紹介やこれまでの活動紹介がありました。レクチャーの時と違って、ざっくばらんな雰囲気の中楽しく会話が進みました。これから1年間こんな近い距離で話が出来るなんて素敵です。佐藤さんの人柄を感じることが出来るひとときでした。その後、23名のルチーダフレンズが誕生しました。(A.H)

ボランティア研修

2004年7月2日(金)
山口情報芸術センター 多目的室

これから約一年間、ボランティアとして活動していく上で、簡単な自主研修会を行いました。最初の研修としては日本各地のアートボランティアはどんな活動をしているのか、ということをメンバーが調べて説明する研修が行われました。この他にも継続的に「YCAMでのワークショップについて」「カメラオブスクラの構造について」「ピンホールカメラによる撮影・現像」「ドキュメントビデオの撮影・編集」といった、活動に必要な研修が随時行われました。

アートボランティアってどんなことをするの?

私達ルチーダフレンズは、6月20日にレクチャーを聞き、7月2日顔をあわせたばかりの出来立てほやほやメンバーです。これから約1年間のプロジェクトにおいて、ボランタリーで活動をしていきます。基本的なルール作りや、企画から運営もメンバーで話し合いながら進めていかなくてはいけません。どのように活動を進めて行けば良いのか、どんなものを最終的に目指すのか、ボランティアの意味と全国のアートボランティアについて調べてみることにしました。

全国の美術館・アートセンターにおいて、多くのボランティアが活動していました。芸術について、幅広い世代の人が関心を持っているようです。(特に女性が多い。)美術館のボランティア導入動機は、教育普及や市民にとって生涯学習の場として、学芸員人材削減による対応策など。それぞれの美術館によって募集の仕方や活動内容は多少違っていました。ほぼ共通していえるボランティアの大きい役割とは、美術館と来館者をつなぐ“架け橋”のようなものとたとえてもよいでしょうか。敷居が高そうな美術館をもっと親しみやすい印象に。

多くの美術館では、担当学芸員によるボランティア講座が開かれています。ボランティアは、美術館のことを知ると共に深く作品などの勉強をします。そして、学んだことを来館者へ発信することで役割を担っていきます。多くは企画展示の時、ギャラリートークを行なっています。ここで学芸員には出来ない視点を見つけて、わかりやすく自分の言葉で伝えられるとよいのでしょう。良いことばかりではありません。多くの人が集まれば問題点も出てきます。関わる人の温度差や、続けていく上での時間的なリスクなど。そんな時は、担当学芸員やメンバーの力の見せどころです。みんなで考えていかなくてはいけません。多くの人がボランティアとして関わる反面、本当にやる気のあるものだけが残っていくのが現状の様です。

新しい活動を起こしているところもありました。ボランティアの意見を積極的に聞き入れて、そこに学芸員の知恵を加える。そうすることで今までにないものが生まれてきます。私たちが目指すのは、この新しい活動です。自ら学び自ら活動する。アーティストとアートセンターとボランティア。この3つの点をうまくコラボレートして新しいものを創り上げていきます。ボランティアというと「無償」「○○のために」というイメージがありますが、「自発的に」を主にします。プロジェクトを通してお互いに「+」になりましょう。この「場」に集まった人が、これから何を生み出していくのかだれにもわからないのです。

私達の活動において、ボランティアではなく「コラボレーター」と呼ぶことにしました。(A.H)

「かぶるカメラをつくろう」ワークショップ

2004年7月21日(水)〜25日(日)
山口情報芸術センター 1階ホワイエ

光の不思議を通じて表現を考えていくこのプロジェクトでは、活動の第一弾として、夏休みに入ったばかりの子供たちを対象に、段ボールで「かぶるカメラ」を作るワークショップを行いました。虫眼鏡を使ったシンプルな構造のカメラを作るこのワークショップの実施は、メンバー自身もカメラの構造を理解するよい機会になりました。ワークショップに合わせて、佐藤さん監修の巨大なカメラオブスクラ「obscura machina 2004(オブスクラマキナ2004)」という作品がホワイエ2Fに展示され、ワークショップでも利用されました。

ワークショップで子供たちと「光」の不思議を体感する

はじめの2日間は、佐藤時啓さんが全体を進めた。時啓さんのオブスクラ・マキナの中でのお話は、制作者だけあって丁寧かつ思いのこもったものだった。子供たちは、一気に下げられたスクリーンに映し出される光景に一様に驚きの声を上げていた。子供はやっぱり動くものが好き。

カメラづくりそのものは、図面を見て自力でつくっていくのは4年生くらいまでの子供にはかなり難しいようであった。ただ、保護者とコラボレーターの支援によって、全員しっかりと完成させることができた。

レンズがついていなくてもとりあえずかぶる穴があいたら、かぶってしまう。子供はやっぱりかぶりものが好き。できあがったカメラをかぶるのはもっと好き。心配する大人たちを尻目に、かぶったままホワイエの階段を上ったり、サッカーゲームに興じたり。ちなみに足下をカメラを通して見ると、自分の足なのに向こうから自分に向かって歩いてくる摩訶不思議さ。蹴ったはずのサッカーボールも自分に向かってとんでくる?!

大人がかぶっても、十分楽しい。オブスクラ・マキナもそうだけど、直接肉眼で見るよりもかえって美しく、不思議にノスタルジックに見える。肉眼で見ることは当たり前すぎて普段意識していないのに、いきなり見えることを意識してしまうからか。箱とレンズとスクリーンというシンプルでローテクな装置でありながら、映画やテレビのように像が見えることに対する驚きからか。わずかにぼけたり画像の周辺部が溶けたりしていることで、幻想的な雰囲気を感じるからか。(K.T)

展覧会へ向けて試行錯誤

2004年8月〜9月
山口市内各所

山口でアーティストと市民が一緒になって、どんなことができるんだろう?佐藤さんとミーティングやメーリングリストを通じていろんなアイデアをぶつけ合いました。その中で「パノラマ」や「ジオラマ」というキーワードが出てきました。これらの言葉について調べたり、模型を作ったりしながら、最終的な表現に向けて試行錯誤を繰り返しました。

形を変えた写真からメンバーのアイデアがどんどんあふれてくる

展覧会に向けて写真を使ってどのようなことができるだろうか?と、いうことで写真についていろいろな方向から考えてみることにしました。例えば、わたしたちが普段見る写真は、三次元の世界を二次元の紙の上に焼き付けたものです。そのことに注目して、それをまた三次元に起こし直してみました。

ひとつは、建築物やもの(この時はイス)を前後左右上下すべて(可能な限りで!)等距離で撮り、それを切り抜きそれらの形を立体に再現してみました。そうすると写真であることのリアルさをもちながら、写真である故の凹凸のなさのミスマッチさがなんとも言えない魅力となってあらわれました。ミニチュアなんだけど、なんか不思議だぞ?といった感じになったのです。

もうひとつは、360度パノラマについて。「自分」を中心にして水平方向に360度。垂直方向に360度。カシャリ、カシャリ、カシャリ。ちょっとずつずらして撮っていくとまるでそこに世界の壁があるかのように写真が周りを囲みます。では、「もの」を中心にして360度。カシャリ、カシャリ、カシャリ。できあがってきた写真から、「もの」だけを切り抜いて平面に並べてみると、コマ撮りアニメのように「もの」がパタパタまわっていってなんとも愉快でした。写真を切って貼って、折ってみて、一枚の写真だけでは見つけられなかったような魅力をまた発見することができたように思えました。組み合わせ方、写真の取り方の順番を変えたらパノラマ・ミニチュアは、どのように見えるのか?また、変化するのか?メンバーたちの発想が、ちょっと形を変えた写真たちからどんどん引き出されていきました。(A.I)

人間の視覚って不思議!

山口のまちなみをデジカメで撮り、半立体にしてみた。まずは前回の不思議な立体化をイメージして、山口のまちかどを撮影に行った。香山公園(瑠璃光寺)前のおみやげ屋が連なる通り、和菓子屋「三隅勝栄堂」の周辺、ふるさと伝承センター周辺の3カ所である。「三隅勝栄堂」は老舗だけに、現代ではなかなか見られない立派な材木を使った歴史を感じさせる建物である。店の中は、和菓子屋特有の雰囲気を持ちながら、地元の写真家の作品が展示してあったりする個性的な空間でもある。そこで、店の方に頼んで、店内の写真も撮らせてもらうことにした。

サービスサイズくらいにプリントアウトした画像を、ダンボールと組み合わせながら立体化していった。厳密に建物から等距離で撮っていったものではないし、角度もそれぞれ違う。そのため、南面のパーツと西面のパーツがぴたっと合うことはまずない。店内は、なおさらである。それでも、ぴたっと合わないが故の面白さがある。ずれはずれとして認識できながらも、無意識につじつまを合わせようという感覚が働いて修正してしまうのか、不思議な統一感もあるからである。

そうこうしているうちに、パーツ同士をぴったり貼り合わせなくてもいいんじゃないかという提案をもらった。たとえば、南面のパーツの西側の端と西面のパーツの南側の端を、である。数センチずれた状態で置いていても、数10cm離れて微妙に目の位置を調整すると・・・・ぴたっと合って見えるというわけである。まさに舞台上のかきわりと同じである。きちんと貼り合わせるところは貼り合わせ、かきわり形式で視覚的につじつまを合わせるところはそのようにした。また、前回編み出した車や電柱だけを立ち上げる方法も併用すると、何ともいえない立体感というか現実感?が生まれた。店の中も、窓越しに通りの車なども写っているため、一寸法師になって入ったような気分・・・。平面を組み合わせることで立体(空間)を表せることを確認できた。

メンバーの上半身を、試しに4方向や8方向から撮ってみて、プリントアウトしたものを貼り合わせてみると、キュビズムのような人物像ができあがった。重複する部分や足りない部分もあるはずなのに、自動補正されてちゃんと見える。やっぱり人間の視覚ってすごい!(K.T)

パノラマ写真の面白さ

展覧会へむけたミーティングのなかでジオラマ・パノラマというものが出てきた。インターネットなどで調べてみると昔はジオラマやパノラマはカメラオブスクラを利用して作られていたようだ。パノラマもジオラマもカメラオブスクラも親戚ということだろうか?

もともとパノラマ写真は超広角なカメラで撮影するのだが、複数の写真をつなぎ合わせることで擬似的に1枚のパノラマ写真を作ることもできるそうだ。佐藤さんが過去に作成されたパノラマ写真を見せていただく。複数の写真を合成することで複数の瞬間が1枚の写真上に同時に存在する不思議な世界がひろがっている。いろいろ調べてみると複数の写真を自動的につなぎ合わせてパノラマ写真にしてくれるツールもでまわっているらしい。というわけで私もパノラマ写真に挑戦。家の近く見晴らしのいいところを探して撮影、専用ツールを利用し作成してみた。ところどころ無理やり合成した感じはでてくるものの普通の写真ではとても撮影できない、横長な広い世界ができあがった。また、他のメンバーが撮影したパノラマ写真は「祭」「ちょうちん」などの要素が加わることでよりいっそう不思議度を増しているようだ。

というわけでパノラマ写真のおもしろさはわかったがここからどうやってルチーダフレンズならではの展開にひろげていけるのか?さらに試行錯誤はつづく。(M.K)

アートふる山口出展「でッかいカメラに入ってみよう!!」

2004年10月2日(土)10:00〜17:00
中市第二駐車場(山口県山口市)

カメラオブスクラプロジェクトでは、山口で毎年開催されているアートイベント「アートふる山口」へ出展することになりました。カメラオブスクラのシンプルで美しい光学の体験を、アートふるに訪れる多くの市民の方に体験してもらうため、佐藤さんが先生をしている東京芸術大学の学生さんと共に、佐藤さんの作品「ワンダリングカメラ」を山口に持ってきてもらうことになりました。自動車で引っ張って移動することができる、人の乗り込めるカメラオブスクラ。天井についたレンズから取り込まれて床面に投影される山口の風景は、裸眼で見慣れているはずの風景とどのように違うのでしょうか?

カメラというメディア(装置)を通して見える風景は・・・

私たちルチーダは10月2日アートふる山口に出展しました。公設市場前駐車場に佐藤さんのワンダリングカメラをとりつけて市民のかたに「でッかいカメラ」に入ってもらいました。宇宙からやってきたような銀色のボディにみんな「これは何だろう?」と不思議な様子。声をかけて中に入ってもらいました。中に入りさっとカーテンを閉めると、床には山口の町並みが・・・画用紙を上下してピントを合わせてよりくっきりと、画用紙の裏を使うとそこにはセピア色の世界が美しく写っていました。普段見慣れているはずの車のランプがこんなにもまぶしく、屋根瓦や電柱が繊細で柔らかく、ワンダリングカメラは山口のにおいや空気を幻想的に映し出していました。これは私たちが普段使っているデジカメやカメラつき携帯では体験できないことです。

このアトラクション的なカメラに子どもたちも大喜び!初めは怖がっていた女の子も中に入るとおもしろくて「もう出たくなーい」状態になってしまいました。

カメラの中に入る楽しみ・・・とても貴重ないい思い出になりそうです。(R.U)

プレスリリース作成の苦労

プレスリリースはそれぞれに色んな思いをもっているメンバーと相談しながらの作成だったのでとても大変だった。それぞれに仕事を持ちそれぞれに芸術に対する(佐藤時啓さんに対する)思いが違う。幅広く伝えたい事がありすぎたりもして皆、頭がこんがらがっていた。ただ、自分の意見を突き通そうとする人はいなく色々な意見が飛び交っても何度も何度も練り直し、結局皆が納得するような結果となった。メンバーの人間性の良さがよく分かった時間だった。「メンバーで作り上げたもの」という事で出来上がった時の喜びは相当なものだった。

無知な私達ルチーダに愛の手を差し伸べてくれたYCAM職員の方に大感謝!!(M.S)

広報活動を通じて自分たちの活動を伝えること

広報は〆切との戦い。YCAM職員さんに何度も締切日や原稿提出日などを聞きながら、進めていった。

佐藤時啓さんの作品や素敵な人柄を知ってもらいたい、私達ルチーダの活動を知ってもらいたいという思いであらゆる広報に掲載してもらったり、記事を書いてもらったりした。交渉がなかなか大変で、まず時啓さんの活動の前にピンホールカメラの原理を知ってもらう事から始まったが電話では中々理解してもらえない。自分自身いったいどうゆう事を山口県の人に伝えたかったのかというのを整理して次の広報会社へ。芸術を広めるという事の意味が自分の中で徐々に確実なものへ変わっていったいい経験をさせてもらって有難かった。(M.S)

ワンダリングカメラ撮影

2004年10月3日(日)
秋吉台(山口県秋芳町)、千畳敷(山口県長門市)

でッかいカメラこと「ワンダリングカメラ」。このカメラは、床面の画像を中に入って楽しむだけではなく、フィルムや印画紙を床に敷いて通常のカメラと同様に撮影することもできます。アートふる山口のイベントに合わせてやってきたこのカメラで、山口市内と秋吉台のカルスト台地、風光明媚な千畳敷にて撮影を行いました。ここで撮影された写真は、最終的には2月の展覧会にも出品されることとなりました。

秋吉台は8月にロケハン(下見)をしに行きました

8月17日、お盆明けの平日。出来る時に出来る人がやるこれが我がルチーダのモットー。言い出しっぺの私と、ルチーダ責任者2名、メンバー3名、子供2名が小雨の中現地に向け出発。活動の中でワンダリングカメラの撮影を10月に予定しておりその候補地としての秋吉台。山焼きにボランティアで参加し火を付けて歩き回った中で素晴らしい風景を目にしていたので提案した。

道路から目的の場所は見えるのに、はるか彼方の道からしか入れないなんて。教育委員会の許可も必要。美東町経由で地図を見ながら無事辿り着く。棚を乗り越え奥へ奥へと進む。撮影本番を考えながらワンダリングカメラが通れるかメジャーで測りながら、小高い丘に登ったり草むらをかき分けたり、ワイワイ騒ぎながら広い大地をかけ巡る。

一つ丘越え又越えして居る中に、これならと満足出来る場所に到着。それまで見えていた道も見えなくなり、四方小高い丘にかこまれ見えるのは草原と空のみ。モンゴル高原のイメージ…。パオのようなワンダリングカメラにはぴったり。後日、車の進む様子はまさにそのとおりであった。(M.H)

難航した撮影場所選び

10月の「アートふる山口」出展に向けて、ワンダリングカメラの設置できる場所を探すことになりました。写真では見たことのあるワンダリングカメラ。実は、本物を見たことがありません。佐藤さんにカメラを設置する必要な大きさやロケーションなどを確認してまち歩きを始めました。アートふる山口では、イベントが開催されるにあたりエリアが決まっています。その中から、適する場所を選んでいくのです。調べていくと、場所によっては規制がありいろんな申請書類が必要なことがわかりました。「土地管理者に許可をとればよい」そう簡単に思っていたのですが、細かい決まりがあり驚くことが続きました。

地図上でポイントを決め、大丈夫であろういくつかの場所に行って測量/撮影をします。「何か工事があるの?」「何するんかねぇ?」メジャーを持っていると待ち行く人に話しかけられます。怪しくない人であることはわかっていただけたようですが、私達はボランティア。身分を証明できる名刺がこの時まだなかったので困りました。測量をした手書きの図面を作り、候補地点を撮影した写真といっしょにメールで佐藤さんに確認してもらう。その後8月、アーティストレクチャー以来佐藤さんが来山することになり、候補地点場所をまち歩きしながら確認に行きました。

いくつかの候補地点、残念ながらあまり適切な場所ではありませんでした。ワンダリングカメラを設置した時の焦点距離の問題や、天候が悪い場合の「光」の量。映り込んでいる景色を想定しての答えです。設置するモノのことがよくわかってないなと、判断はなかなか難しいものです。佐藤さんに確認をしてもらってよかった。逆にここに「設置するのは○」というポイントを佐藤さんに上げてもらったのですが、やはり規制などいくつかの問題点があり、頭をかかえて振り出しにもどるのでした。

ひまを見てはまちを歩き、視察・交渉を繰り返しました。ようやく決まった場所が「中市第二駐車場」です。大きく開けていて、すぐ県道もあり景色に動きがある。歴史ある町並みもある。また地元の人なら、この場所がどこなのかがすぐにわかります。佐藤さんもここなら納得満足です。アートふる山口開催の約1ヶ月前のことでした。

場所を確定するにあたり、多くの方にご理解とご協力をいただきました。最初、ワンダリングカメラの写真を見せると「これは、何?」と首をかしげ、何度か話をすると、私たちのやろうとすることに共感してくださり、本当にまちのあたたかさを感じました。当日やってくるワンダリングカメラ、ぜひ体験してほしいです。出来上がったばかりのチラシを近所の方へ配布、あいさつをしてまわりました。当日を楽しみに待っています。選んだ場所に間違いはないぞ!!(A.H)

苦労するからこそ残る思い出

汗ばむ陽気だった秋吉台では、被写体として撮影に参加。ワンダリングカメラに写り込むために、険しい大地をみんなで歩いた。くっつかないようにお互いを見つつ自分の「立ち位置」を決める。準備が調ったら、遠くに見えるカメラを見つめ撮影開始の合図を待った。ワンダリングカメラでの撮影はピンホールカメラとほぼ同じで、じっとしていなければ写らない。撮影中は風にそよぐ草の音だけが聞こえ、みんなが撮影のために神経をはっている雰囲気が伝わってきた。秋吉台での撮影は、写す人、写される人の息がぴったりあっていたからこそできたものだろう。しかし、カメラに写りこむためにあんなに体力をつかうなんて…!こんな経験ができるとは思いもしなかった。

次に移動をして千畳敷へ。海沿いの撮影ポイントだったため、凍える寒さだった。夕暮れも近づく中、てきぱきと準備を進め撮影にはいった。撮影中はカメラの中に二人しか入ることができない。ルチーダフレンズのメンバーは外で震えながら撮影の終わりを待っていた。

この時、ワンダリングカメラを不思議そうな顔で眺めていた人がいたのを覚えている。作業中で、一緒にカメラの中に入ることができなかったのが本当に残念だった。もし一緒にカメラに入っていたら、新たな出会いが生まれたかもしれない。ワンダリングカメラは風景を写しだすただの「カメラ」ではなく、人と人とを結びつける「部屋」でもあるのだから。(S.A)

ピンホールカメラ制作・撮影・現像研修

2004年11月7日(日)〜12月5日(日)
秋吉台国際芸術村、山口情報芸術センター、市内各所

カメラオブスクラプロジェクトとは言うものの、カメラオブスクラについては勉強しただけで、物足りなさを感じてきたメンバーたち。実際に缶に針で小さな穴を空けるだけで撮影ができてしまうという、ピンホール(針穴)カメラを作って、撮影・現像を行ってみることになりました。秋吉台国際芸術村を借りての現像研修では、必要な材料や手順についてインターネットで調べたり、佐藤さんにメールで質問したりして、試行錯誤しながら自分たちで研修を行ってみました。

ピンホールカメラ制作でカメラの構造を再確認

カメラの基本原理は簡単なもので、暗い部屋とそこに光の取り込み口(穴)を作ってやることで、光たちは真っ直ぐに部屋の中に飛び込んでくる。

写真はその飛び込んできた光を印画紙で受け止めてやることで像が記録される。光を通さない容器であれば何でもカメラにできてしまう。そこでいろいろな形の缶を持ち寄りカメラをつくってみた。大事なのはほしい光だけを印画紙のところへ導いてやることだ。まず缶に少し大きめな穴を開けそこにほしい光だけを取り込むための小さな穴を開けた真鍮の板を貼り付けてやる。次に缶の内壁で光の乱反射が起こらないように真っ黒に塗りつぶす、必要なのはそれだけ。頭でわかっていることではあったが実際こうしてつくってみると、一眼レフカメラもデジカメも「かぶるカメラ」も「オブスクラマキナ」も「でッかいカメラ(ワンダリングカメラ)」もみんな基本は一緒であることを再確認できる。ということで出来上がったカメラで何を撮影するかということになるのだがそれはあとのお楽しみ。次回の撮影・現像研修へと続く。(M.K)

撮影と現像を体験しながらアイデアを探る

作ったピンホールカメラで、撮影・現像に初挑戦。針で穴を開けただけのレンズも何もない缶で、本当に写真がちゃんと撮れるのだろうか…。不安と期待で胸をおどらせ秋吉台国際芸術村の地を踏む。まずは、暗室で印画紙(フジプロWP FM2 カビネ)を缶にあわせサイズカット。印画紙がずれないように固定し、穴を黒テープ(パーマセルテープ)で光が入らないようふさぐ。いよいよ撮影だ。さて、どこを撮ろうか…。メンバーそれぞれ自分の場所をさがし歩き回る。決まったところで、露光時間を計測。

天気は晴れ。印画紙感度ISO表示にして10くらい。穴が0.3ミリ、穴から感光材料までの距離が10センチのため、F値は、100/3で333。次の露出の組み合わせを参考にして、
露出表
f=333の近似値のf=360から、シャッタースピードは128秒(約2分)といえる。

そっと穴をふさいだテープをはがし、待つこと2分。テープでまたそっと穴をふさぐ。その光景はとても撮影しているという感じには思えず、とても奇妙な感じがした。無事撮影が終え、そのまま缶を手に暗室に戻って現像にうつる。

今回現像のために準備したものは、現像液(フジコレクトールE)・停止液(フジ酢酸)・定着液(フジフィックス)。バットにそれぞれの液をつくって入れ、現像(90秒)→停止(30秒)→定着(5分〜7分)→水洗(1分)→乾燥の手順で行った。缶から出した印画紙を現像液に浸すと、じきに反転した像が現れてくる。初めて見るピンホールカメラでの写真は、想像していたものと違って、なんとも幻想的というかなんとも面白い、意外性のあふれたものだった。今回撮影前に缶に光の漏れがあるかチェックをせずに行ったため、現像した写真のなかには漏れがあったのでは?と思われるほど真っ黒になったものや、また、カメラの穴の処理具合があまかったのでは?と思われるものもあった。2回目、3回目…と撮影・現像を繰り返すうち、天気の変化もあってか露光時間が不足と思われる写真もでてきたりした。撮り方にもいろいろ欲が出てきて、ただ撮るのではなく、缶にセットする印画紙をあらかじめ手でくしゃくしゃにしてみたり、たまたま駐車場にとまっていたwillという面白い形をした車があったため、四方から撮影し立体化を試みたりした。立体化は結局失敗におわったのだが、一枚一枚で見ると、アーモンド状に大きくゆがんだwillが写っていて、かなり面白い写真になっていた。

合計5回の撮影・現像を終えYCAMに戻り、できた写真をスキャナーで取り込んでからパソコンで反転する作業を行った。解像度をあげるなど微調節することで、写っていないと思っていた部分も見ることができ、露光時間が足らなかったことをあらためて知る。ピンホールカメラの撮影は、感と経験が必要らしい。F値をもとに撮影するとほぼ間違いない写真になるそうだ。何度も撮影していると、光を感覚的に知り、上手に写真が撮れるようになるという意味がわかった気がする。この研修ですっかりピンホールカメラの魅力に取り付かれたメンバーだが、ピンホールカメラの仕組み、現像の基本的なプロセスを知ることで、今後の制作活動において、新しいアイディア・可能性を探るきっかけになったのではないだろうか。(A.M)

まち歩き

2004年11月〜2005年1月
市内各所

展覧会では「山口の光景」をテーマに何らかの方法で山口を撮影することに。住んでいる山口のことをもっと立体的に知りたくて、メンバーはまち歩きを繰り返しました。結果として、新しいものと古いものが混在する山口の魅力を再発見することになりました。

まち歩きで知ったやまぐちの手触り

最後の活動として、佐藤さんといっしょに展覧会をすることになりました。何をどんなふうに撮影して形にしていくのか。試行錯誤が続きます。最初に佐藤さんから出されたお題が「山口を映し出すこと。他者との関係を考えること。光の像の仕組みを理解し、使うこと。」この3つでした。その後「4歩目の山口」そんな問いかけが出できて、それが何なのかを探すためにまち歩きをしました。

カメラといっしょにまちを歩きます。初めのうちはカメラに抵抗があり、とにかくシャッターを押して「撮る」ということから始めました。こんなにいろんな角度でモノを見たのは久しぶり。山口のまちをゆっくり見て歩くのも初めてのことでした。いろんなモノが目に付き、気がつくとたくさんの写真を撮っていました。家にもどり写真を見てみると、目には見えていないモノが映りこんでいました。ガラスに映っている街。水たまりに空。「えっ?」あたりまえなことなんだけど、カメラが映し出すそのままの風景を不思議に思いました。

まち歩きを繰り返すある日のこと、山口にゆかりのある大内氏時代(室町時代)の古い地図に出会いました。驚いたことに今ある路は、昔とほとんど変わりないのです。すぐに図書館で地形や歴史を調べました。本で見たものを思い出しながらまた歩きます。よく見ると新しいモノの中に昔の名残あるモノに気がつきます。同じ場所を歩いても、おもしろい。何人かで歩くと視点が増えてもっと見え隠れしていたモノが浮き彫りにされてきました。

山口は「路地」の多いまちです。網目のように広がっています。カサを広げて通るとすれ違うことが出来ない間。そんな時にゆずり合う人とのふれあいをうれしく思いました。人情味のあるおじさんに出会あったのも2つの塀の合間にある細い路地でした。もしかしたら、「4歩目」ってこれかもしれない。今視覚的に見えているモノではなく、そこにある時間や空間が融合されたもの?そして、そこに暮らしている人との関わり。

山口は、新しいものと古いものが混在する素敵なまちです。まち歩きの積み重ねが、展覧会作品の撮影ポイントになりました。(A.H)

佐藤時啓滞在制作

2005年1月26日(水)〜2月11日(金)
山口情報芸術センター、市内各所

展覧会に向けて、佐藤時啓さんが約2週間、山口に滞在して制作を行いました。制作は、まずオリジナルのピンホールカメラ作りから始まり、撮影、現像、コンピュータへの取り込み、修正、大型出力機によるプリントアウト、プリントされた写真を立体的に構成。これだけ盛りだくさんの工程でしたが、佐藤さんとルチーダフレンズが協力して、すべてYCAMにて作業が行われました。

積み上がる不安・・・

1月26日、大寒波がやって来るという情報の中、佐藤さん来山・・・。

山口カメラ制作1日目。山口カメラも作らなければならない、撮影もしなければいけない、そして、それを現像して、作品にしなければいけないという、ハードスケジュール!!(展覧会オープニングまで16日・・・。その間佐藤さん東京に帰る日もあり刻々とタイムリミットが・・・。)とにかく、まずは、24個のピンホールカメラを作らないことには撮影できない!!木のパーツがどのようにできるのかわからずに、佐藤さんの指示のもとに“木の板”が箱になり積み上げられていく。もうひとりのメンバーとともに、これでいいのかね〜?これ最終的にはどういう風になるのかね〜?といいながら(お互いに思った不安を確認するようにぶつぶつ・・・)佐藤さんとYCAMスタッフは、それぞれ黙々と作業・・・。わけのわからない二人は、ちょっと不安になると佐藤さんに確認しに行く。カメラがちゃんとできないとあと撮影できなかったら責任重大だと・・・・。(E.K)

カメラが生まれていく瞬間

オリジナルカメラ制作がYCAM荷解き場横で始まりました。そのカメラは、なんとピンホールカメラ24個がくっついた360度周りの風景を映せるカメラです。今回の展覧会作品は、カメラ制作の段階からルチーダフレンズといっしょに創るという構想が佐藤さんにありました。カメラ制作といっても私たちは全くの素人。カメラがないとこれからの撮影が出来きません。とても重要な作業なのです。しかし、そこに設計図はなし。佐藤さんがいて、材料があって、あとはこんな感じという「東京カメラ」の写真のみ。佐藤さんの指示のまま、見よう見真似で制作を始めました。

木のパーツを1つ1つ手作業で組み上げていきます。初めての道具を使って作るのです。とても不安。そして、佐藤さんはアーティスト。ちょっとしたことでも確認して進めました。「わぁ、また失敗!」「そのくらいは、だいじょうぶ。だいじょうぶ。」と佐藤さん。失敗を繰り返しながら制作・撮影を続けてきたからこそ言えるその一言で大安心。作業する手が進みました。

ずいぶん形が見えて来た時、かたわらで佐藤さんが多項式ピンホールカメラを作リ始めました。オリジナルカメラ24個は途中から少しだけ私たちに任されたのです。正直言うと、「こんな作り方で、光はもれないのだろうか?」出来上がるまで心配で仕方がありませんでしたが、よく考えると「任せてもらえたんだぁ」という信頼関係がうれしくもありました。

カメラの色は「やっぱり赤!」。冗談のように言っていた色の話でしたが、本当に塗ることになりました。「いい色見つけた!」作業工程の遅れにもかまわず「やるならやろう!」と赤を1つずつ丁寧に塗っていきました。ただ、塗る。とても寒い夜で、刷毛の音と塗料のにおいがたまりませんでした。一夜明けて、朝から作業の続きです。晴れた空からの光が、赤をピカピカ照らしていました。とても挑発的であり元気が出る色です。この「赤」がまちに出かけたとき、どんなことがその周りで起こるのかとても楽しみです。

真っ赤に出来上がった24個のピンホールカメラは、土台を軸に1個1個組み上げられていきました。つなぎの金具も佐藤さんが作ったオリジナル。来ていた人みんなでネジを1本ずつ締めていきました。最後のネジは、私が締めさせてもらいました。「山口カメラ」完成!なんと偶然にもこの記念すべき日は、私の誕生日でもありました。単なる材料から“モノ”に変化させていく佐藤さんの素早さは、本当に驚くばかりです。次々と、形を現す“モノ”たち。そのモノが人と出会って次にまたどんなことを生み出すのかな。真剣な眼差し、たまに見せる厳しい表情。こんな近くで同じ時間を共に過ごせることを、幸せに思いました。少し遠くを見つめて先のことを考えている・・・。だんだん佐藤さんの動きがわかってきて、次は何をするんだろうとワクワクする毎日でした。(A.H)

佐藤さんのこだわりとは

カメラ制作2日目。天気がいいというので、YCAMの上で“タイラカメラ”での撮影。YCAMの上にあがれるなんて、めったとないと、うきうきしながら撮影に立ちあう。YCAMの上は滑走路のような広がりのすてきな空間だった。佐藤さんのF値・時間などのレクチャーをうけながら「タイラカメラ」で撮影。「タイラ2つ目・3つ目カメラ」で撮影されたのが、どのように写っているのか、まったく想像がつかない・・・(撮影に立ちあったおかげで、作品をみて納得!!)撮影後は、寒い中、ひたすらカメラ作り!・・・。なかなかすすまない!佐藤さん、山口カメラの色にこだわる。YCAMのスタジオAの壁の赤色にしたいとペンキさがし・・・。(それでなくても山口カメラがなかなかできないのに、ペンキさがしにこだわっている時間あるのかな〜とおもいつつ・・やっぱりこだわることが、アーティストだと・・・。)(E.K)

はじめて電動ドリルを使った!

カメラ制作3日。夜10時すぎついに山口カメラ完成!!もくもくと赤いペンキ塗りをし、角度を確かめながら、一つ一つの箱カメラが立体になっていく・・みんなで電動ドリルを使いながら(私は今回の作業で初めて電動ドリルを使いました)「山口カメラ」は、ついに完成!!まるで映画にでも出てきそうな物体!?でした。白板から平面・立体へボンド・釘の打ちつけ・ドリル・ペンキ塗り(中の黒塗りー光が反射しないように)・ピンポールの穴のとりつけ・ふたのとりつけ・スポンジはり(光シャットアウト)・留め金つけ・赤いペンキ塗り→24個のピンホールカメラのできあがり!!寒い中、わけわからずながらも!?地道にできていく・・・。

本当にできるのかな、早く作らないと撮影ができないと内心はらはらしつつ、ひとつひとつ地道に時がすぎ山口カメラはできあがる・・・(E.K)

カメラを持ち出しついに撮影

1月30日「山口カメラ」撮影開始。まず、荷台にのせて西門前商店街へ、カメラを運ぶ。それぞれのカメラのシャッター時間を決め、一人一個担当する。カメラに写らないようにしなくてはいけないので、まるで鬼ごっこのようだった。メンバーの秒読みで時間(30秒〜1分30秒)になるとそれぞれが、シャッターになる黒いふたをする。みんな楽しそうだった。(佐藤さんは、いつも一人でやっているから、みんなでやると楽しいよね。記録係もいるし・・・とうれしそうだった)途中アクシデントがあった。カメラの寸法がきっちりすぎてフィルムフォルダーが壊れてしまう。(カメラ好きのメンバーが、すぐに近くのカメラやさんに走るがやはり特別なものでお店にはなかった。)

一の坂川撮影。橋の上におかれた「山口カメラ」はとてもめだつ。佐藤さんいわく「挑発的な赤でいいね〜。」(こだわったかいあります・・・。)通りがかりの人々の「あれはなんなの!?」と遠目の視線を感じる。そんな中、私たちは、わぁわぁいいながら山口カメラの撮影を楽しむ。

瑠璃光寺の境内におかれた「山口カメラ」はすごく威厳があった・・。夕暮れ時で、光がすくなくなっていたのでシャッター時間も長く、30秒〜6分までの差があり境内も広く、それぞれ待ち時間が違う。立ち止まると写ってしまうので、寒いせいもあり動き回る。まるでおにごっこのようでした。みんなで作った「山口カメラ」でどんな風に写っているのかみんなわくわくだった。(E.K)

極寒の中、お寺での撮影

「山口カメラ」撮影2日目。寒い中「山口カメラ」は常栄寺の本堂の縁側におかれての撮影。平日なので手伝える人が少なく一人4個のシャッターをうけもつ。長いときは15分ぐらい時間あったので、寒くてじっとしていられず、雪舟庭をまわる。佐藤さんたちは、縁側で雑談。売店の方が「寒いでしょう」とカイロをくださったくらい寒かったです。撮影が終わったあと、お茶をいただき「雪が積もったらすごくきれいなんだけどね。」と話ながら、楽しいひと時をすごしました。(その日の夜から雪が降りだし翌日は、大雪が積もりました!!)「タイラカメラ」での路地撮影では、細い路地をどんどん歩いて撮影ポイントを決めていく佐藤さん。「山口はいいね。」と撮影可能な光がある時間帯まで撮影されていました。私も初めて歩く路地で、改めて山口発見!でした。

「山口カメラ」・「タイラカメラ」での撮影が一通りおわり、現像。いつもはラボにだすという佐藤さん。現像は久しぶりというので、内心ドキドキもののようだった・・・。トイレ付き一室が即席の現像室になる。無くてもどうにかしようと人間は考えるんだなと改めて感心!大きなプラスチックトレーに穴をあけ、排水口にホースをつけて水洗機のできあがり!「山口カメラ」・「タイラカメラ」といい現像室まで手づくり。文明が発達してどんどん便利になっていき、機械につかわれているようになったが、本来はシンプルなものからのスタートだったんだと、忘れていたなにかを思いださせてもらったような気がする。カメラだって、光をあつめるためのシンプルな箱からできているのだから・・・。(E.K)

暗室で見えた佐藤さんの笑顔

佐藤さんと制作した「山口カメラ」、「タイラ」2つ目・3つ目・6つ目。この撮影に使われたフィルムは、YCAMにて佐藤さんとルチーダフレンズで現像しました。暗室がないので普通の部屋を改造して即席暗室を作ります。現像に関する必要用具・薬剤は、佐藤さんが東京で準備してこられました。佐藤さんも10年ぶりに使うとか。こっちは、初めて見るモノに興味津々でした。研修をしていたので、基本的な現像のやり方はわかります。しかし、カメラの制作に続いて、もし何か間違ったことをしたら作品がダメになる・・・。そんな不安を抱えながら真剣に取り組みます。

現像は、決まった時間と用具・薬剤の中で正確に繰り返されていきます。「山口カメラ」で撮影したモノを1つの形にするには24枚の現像が必要です。6枚ずつを4回現像して1作品になるわけですから、時間もかかります。フィルムの扱いや装置を使用することは初めて。「順番、液体を間違って入れない。時間は正確にする。ネガの扱いは慎重に。これを守れば、大丈夫。僕の声をよく聞いて。」と言う佐藤さんに逆に緊張しました。

装置と水の流れる音だけが、狭い暗室に響きました。部屋を真っ暗にして、フィルムを取り出し筒に入れます。真っ暗の中での作業ですが、佐藤さんには見えるそうです。長年の勘。一度に6枚のフィルムを取り出し、入れ替えるのですが簡単に作業が進みました。「はい、明かりつけて。」タイマーセット。「・・・3.2.1.0秒」時間を確認しながら手渡した薬剤を佐藤さんが順番に筒に流し入れ、時間がきたらその薬剤を出します。まさに連携プレイです。

現像終了。筒のフタを空ける瞬間、「ポン!」と音がします。「映っているの?」佐藤さんの顔をじっと見ます。「んー、いい感じに撮れてるね。」ほっと一息。撮影の現場にも立ち会っているので、映っている光景が不思議な構図であることがわかります。乾いた24枚のネガをカメラと同じ位置に組み合わせます。何だかパズルのように平面に並べました。「すごい!」現実に見ていた360度の光景が、こんなふうに映し出されているなんて。同じ場所なんだけど、別の空間みたい。気にしていなかったものが大きく映っていたり、映っているはずのモノがそこにはなかったり。でも時間の流れはそこにあるのです。

大雪の日も、歩いてYCAMへ行きました。がんばって行ってよかった。「みんなで撮影すると楽しいなぁ。」「現像してる時の僕の写真があるんだ。うれしいなぁ。」いつも1人で活動する佐藤さんにとって、みんなで撮影や現像をすることに新しい発見があったようです。私達も、佐藤さんを見ていろいろ感じてきました。カメラを通じて連携した佐藤さんと私たちの作品が、まもなく姿を現します。(A.H)

展覧会
"pin-holes" project in yamaguchi
針穴図像 -光の間-

2005年2月11日(金)〜3月13日(日)
山口情報芸術センター

2004年6月に始まったカメラオブスクラプロジェクト。通常のワークショップとは違い長期にわたって活動してきたこのプロジェクトは、紆余曲折を経ながらたどり着いた活動の結果が、この展覧会で結実しました。巨大なパノラマ写真の立体作品やワンダリングカメラの写真、実際の撮影で使われたオリジナルカメラの展示、コラボレーターによる活動の映像とパネルのドキュメンテーション、といった内容でした。

展覧会は夜に作られる

2月3〜6日、佐藤さん一時東京に帰京。その間YCAMで展覧会の準備がされる。プリントアウトも大きなプリンタで、一枚出力するのに時間がかかるため、連日夜遅くまで印刷される。(プリンタが止まらないことを願いつつ・・・。)作品をはるパネルもスタッフの手づくり。(YCAMのスタッフは職人だった。)

2月7日再び来山された佐藤さん指示のもと出力された写真がパネルにはられ、高さ3メートルの八角柱に組み立てられる。「山口カメラ」制作からどんな作品になるのかわからなかったが、できあがっていく様をみて、少しずつ理解できていった。YCAMスタッフが会場を作ってくれる中、ルチーダのメンバーは、それぞれ自分たちでできることをやって、準備が進んでいく。「タイラカメラ」のパネル貼りをみんなで、空気が入らないように貼っていく。貼りなおしができないため、みんなで空気が入らないようにチェックしながら少しずつはっていく。夜遅くたいへんだったけど、佐藤さんとともに、一つのものをみんなで作り上げているという充実感があった。(E.K)

作品を作ったあと、展覧会場でも発見がある

佐藤さん・YCAM専門スタッフ・ルチーダフレンズの連日準備作業、展覧会の会場はギリギリに出来上がりました。初めてゆっくり会場内を歩いてみて、「わぁーすごい!」という感動とあわせて気がついたことがありました。会場内がわかりにくいのではないか?どんな展示・活動なのか初めて見る人にわかるだろうか?そんなことがきっかけで、週末の土・日、ボランタリーで会場案内に立つことにしました。会場で解説するにあたり、簡単なレクチャーを受けました。展覧会の解説なんて初めての経験です。正直言って、カメラに対する質問を受ける時はドキドキでした。しかし、やってみると思わぬ発見があるものです。

「これが、撮影に使われた“カメラ”です。」やはり会場にあるカメラは、オブジェにしか見えなかったようです。作品を見始めた人にちょっとした“きっかけ”をなげかけると、どんどんイメージが膨らんできて、それから会話がはずんできます。今回の作品作りからプロジェクトのことなど様々。興味をもたれる方は、時間を気にせずにいろんなことを質問したり、逆に「こんなことも出来るのでは?」と提案をしてくれたりします。同時期、山口県立美術館で「ピカソ展」が行なわれていました。そのせいか、「これこそキュビズム!!」「ピカソよりわかりやすくておもしろい!」そんな言葉をよく聞きました。そういえば、私たちも作品について追求をしているとき、偶然にもキュビズム的な模型を作っていました。

「作品の展示の仕方がいいね。題名を書いてないのがいい。」そんな年配のおじさんに出会いました。ふくらんでくるイメージ、作品を見ながら一緒に語りました。一方、こんな意見もありました。「題名やハッキリとした場所が表記していないのは不親切ではないのか?」題名や解説から作品を見ている人が多い中、作品の展示方法・見方について、教えられるひと時でした。ホワイエの階段から降りてきた学生さんに、「これが『カメラ』です」と言うと、「ビデオを見てきましたからわかります。」どうやら2階のドキュメンテーションビデオがきっかけで作品を見に降りて来たようなのです。意外でした。

会場内で解説に立ち、質問を受けることで約1年間活動してきたことの意味をあらためて知りました。見に来られた方とお話をすることでいろんな疑問が解決されていきました。“展示して終わり”にしなくてよかったです。何もしなければ何も変わらない、得られないままになっていたかもしれません。私たちがしてきたコトが目の前に作品として現れます。それを見に来た人の言葉を受けとめ、あらためて「山口のまち」を知ることが出来ました。

パブリックな空間の中で、アーティスト佐藤さんと市民が共に創り上げた展覧会。お金を払って見に来るというわけではないので、展示方法もどんな形がよいのかは、やってみないとわかりませんでした。終わってみると、たまたまやって来たいろんな人達に作品を見ていただくことが出来ました。写真に興味がなくても、知っている場所が写っていると何だろうと見ています。そこに会話があって、そのことがきっかけで、カメラオブスクラの単純な仕組みに興味をもってくれました。カメラオブスクラが映しだす山口の光景から何かを感じていただけたなら嬉しいかぎりです。これは私たちのすんでいるまち「山口」です。

展覧会は3月13日に終わり、佐藤さんといっしょに撤去作業を行ないました。一つ一つのことが思い出されつつも、淡々ともとの空間にもどっていきました。やりたいと言った時に、すぐに応じてくれた佐藤さん・YCAMスタッフの皆さん、ルチーダフレンズに感謝します。(A.H)

展覧会会場での触れ合い

展覧会がはじまり、山口市内をはじめ岩国、光、美祢、徳地、宇部、周南、下関と遠くからの友達にも見にきてもらいました。みんなおもしろいと興味をもってみてくださいました。私のおすすめは、山口カメラで撮影した雪舟庭の八角柱の作品です。庭の広がりと広間の対照的な空間で、中心に座ったらまるで縁側に座って庭を眺めている感じになります。そしてそのまま180度向きをかえると畳の間で、にじりでたくなるような感じになるからです。(写真をとるときも、ちょっと視点を変えるだけで面白い作品になるということと同じ現象だった)展覧会にこられた方にもそれを体験してもらいたくって、まずは、ふつうに見てもらい、そして中央に座ってもらうと「そうそう、ここ行ったことがある雪舟庭で、縁側に座ってながめたいね」としばし山口カメラの雪舟庭を眺めてらっしゃいました。またある人は、ここに赤い毛氈をしいて、「お茶がでてくるといいね〜。」といわれたり展覧会にこられた人と楽しい会話を楽しむことができました。

一年間ルチーダとしての活動もそうでしたが、何かを通じていろんな人と出会える楽しさを改めて知ることかでき、この機会を与えてくださった方々に感謝です!特にルチーダのメンバーでもあり市民委員会のスタッフでもあったA.Hさんのワンダリングカメラを山口に呼びたいという思いから実現したということもすごい巡り会わせだと思います。(E.K)

コラボレーターとしての自身の存在を再認識

展示が始まってまもなくのとある日曜日。私は展示パネルの前に立っていた。ここYCAMの特性上、お客様は作品を見にこられる方だけではない。たまたま図書館にきたかた。スタジオでの公演の前後に通りがかったかた。写真好きなかた、それほどでもないかた。近所が写っているからと見にこられたかた、友人に勧められ見にこられたかたなどなど様々である。

私としてはこの作品は「見て」「感じて」もらいたかったので、まずちょっと遠巻きに様子をうかがう。(決して私が人見知りだからではない…)そしてタイミングをみて話しかける。カメラ好きなかたはF値だとかシャッタースピードなどを気にされたりしていたが、作品と作品の間に静かにたたずむ赤い「山口カメラ」と黒い「タイラカメラ」がカメラであることに気づく人は少ない。圧倒的なパノラマや1枚にいくつもの世界が広がる多孔カメラ、それらは「迫力」や「美しさ」というだけでは表現できない意味を主張している。「写真」と「カメラ」、「被写体」と「撮影者」そして「鑑賞者」、「撮影場所」と「展示場所」、「撮影していた時間」と「見ている時間」、そのすべてが今回の作品の一部として存在していた。

ときに思いもよらない質問で戸惑うこともあったが、それはまたコラボレータとしての自身の存在を再認識させられる瞬間でもあった。わずか1日作品の解説に立っていただけだが、佐藤さんとカメラを制作したり、撮影していた時間と同じ…いや、それ以上の濃い時間となった。

つたない説明にお付き合いいただいたみなさまに感謝です。(M.K)

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