インターフェースとしての身体空間
〜コミュニケーションデザインをインターフェースから考える

本展は、情報化社会特有の文化的多様性を表現するキーワードとして、「インターフェースの未来」をテーマに展開する展覧会です。YCAMが開拓してきた独自の分野である<アート+身体表現>の視点を踏まえ、映像・写真・アニメーション・サウンド・建築オブジェ・プロダクトデザインなど、さまざまな分野の作品を選定しています。会場となるYCAMの館内各所には、国内外(アメリカ、オランダ、スペイン、日本)8組のアーティストによるアートやデザインの委嘱作品を含む最新作が登場します。

展覧会のタイトルである「ミニマム インターフェース」とは、ユーザ(鑑賞者)が、言葉によるインフォメーションやガイダンスを得ることによって、インタラクションが成立するのでなく、むしろ言葉を回避して、身体感覚や知覚を直感的に開放するユーザーインタラクションの方向性の先に、インターフェースのあり方を見いだすことを意図しています。こうした表現がもたらすユーザーインタラクションは、私たちに、作品の生み出す情報システムやプロセスそのものへの深い関心をうながし、情報と表象との新たな関係を築くインターフェースの可能性を示唆します。また、本展では、高度情報化技術が登場する以前の芸術表現にはなかった「インターフェース」の存在を、メディアアートや情報デザイン特有の最も重要な第1要素(ミニマム)としてとらえ、情報芸術の視点によって開かれる時間・空間の可能性を探る起点として考えています。

本展の見どころ

メディアと身体を通じてつながるもの

一般的に、コンピュータとユーザーとのやり取りをつなぐ機器・装置をさす「インターフェース」。たとえば、コンピュータのキーボードは、ペンで書く行為を代理し、コンピュータと思考とをつなぎますが、別の見方をすれば、「書く」という行為を通じて、身体の新たな可能性を広げているともいえるでしょう。インターフェースとは、もともと「境界」や「界面」を意味しますが、インターフェースが存在することで、別の世界やシステムが連結し、そこに開かれる情報伝達に対して、私たちは普段意識しない身体のイメージや新しい身体感、心身関係に気づくことができます。本展では、その知覚と身体のダイナミックな関係全体を、インターフェースによって開かれる知覚世界のアフォーダンスの視点からアプローチし、作品表現がもたらす空間の多様性を紹介します。メディアテクノロジーと身体性をつなぐユニークなインターフェースのアイディアを、視覚・聴覚・触覚をクロスオーバーさせながら、ぜひ体験してみてください。

作品と観客との関係をデザインする展覧会

さらに「ミニマム インターフェース」展では、作品と鑑賞者の関係性、アートセンターの役割を再考していく手がかりとしても、このテーマを考えています。会場で作品を鑑賞するためのナビゲーションを、作品展示に対するメタインターフェースとして位置づけ、会場における情報のあり方についてもこの視点から独自にとらえ直します。本展の出展作家でもあるリーディング・エッジ・デザインが、空間全体のナビゲーションとなるインターフェースデザインを考案し、観客の新しい感覚や能動的な思考のチャンネルを開くための試みとして、ユニークなナビゲーションデザインを採用します。