実験を終えて
実験を終えて佐藤雅彦さんがそれぞれの結果発表をしながら解説を加えていきます。おおむねどれも予想以上に美しい結果が出ました。時間の積層を手作業で生み出すことによって、物体の運動に時間の経過という側面をとらえていくことができました。高校生にとってはカッターと両面テープを使った工作作業は久々だったかもしれませんが、手作業ならではの徐々に形が生まれてくる感覚に喜びを感じていたようでした。数学でも理科でもない、その中間地点に美しい表現の要素が潜んでいる、と静かに語る佐藤さんは、常に新しい表現の可能性を見つめているクリエーターであることを実感しました。
今回YCAMが佐藤研究室と共にワークショップが開催できたことはとても幸運だったと思います。知識だけでなく、自ら実践し結果に対して実感を伴って理解すること、というワークショップの本質を改めて再認識する充実したワークショップでした。
また、ワークショップデザイン、運営という視点でとらえてみても、今回の「時間」という難しいテーマ設定に対して、6ヶ月も前から研究室内で繰り返し検討・実験してくださったそうです。内容をぎりぎりまで熟慮し、その都度テストしてみて確認することや、前日も粘り強く夜遅くまでリハーサルを繰り返して当日の進行に支障がないように手順を確認している様子をみていて、制作に対する真摯な態度というものが研究室全体に浸透している印象を受け、とても感動しました。
慶応義塾大学SFC 佐藤雅彦研究室プロフィール
慶應義塾大学SFCにおいて「表現方法」と「教育方法」をテーマに研究活動を行う一方、その研究を社会に投げかける活動もしている。佐藤研の主な受賞内容--「動け演算」でADC賞・原弘賞、「ピタゴラスイッチ」(NHK教育)でクロアチアドナウ賞、「日本のスイッチ」(毎日新聞)でグッドデザイン賞。その他に、「任意の点P」(美術出版社)、「animation for concepts」(NHK教育)がある。