YCAM InterLab Camp vol.1 -openFrameworks-

メディアアート作品の制作に使用される開発環境「openFrameworks」を取り上げ、開発者であるザカリー・リーバーマン氏とテオドア・ワトソン氏を講師に迎えた日本初の集中講座を開催。プログラミング経験者等の中・上級者を対象にした本講座には、日本のみなならず、韓国、オーストラリアから、学生や研究者、プログラマーなど様々なバックグラウンドをもつ15名が参加した。4日間のカリキュラムでは、「openFrameworks」を使用した作品の立案から制作までを課題とし、講師によるレクチャーとワークショップ、上田悦子氏をゲスト講師に迎えた画像処理ライブラリ「OpenCV」のレクチャーを実施した。最終日には、見学者を招いた公開イベントとして、参加者が制作した作品や開発内容を紹介する成果発表を開催した。開発者本人を講師に、高いスキルを持った少人数の参加者が集中的に制作に取り組んだ本講座は、技術習得だけに留まらない、YCAMと参加者同士の交流の場、情報共有の機会となった。

開催概要

期間:2008年9月25-28日
講師:ザカリー・リーバーマン(メディアアーティスト/プログラマー)、
テオドア・ワトソン(アーティスト/デザイナー/実験者)
ゲスト講師:上田悦子(奈良産業大学情報学部准教授)

openFrameworksとは

プログラミング言語C++をベースにした、インタラクティブデザインやメディアアートを制作するためのフレームワーク。2次元や3次元の図形の描画、アニメーション、サウンドの録音と再生、動画のキャプチャーと再生、ネットワークの活用、マウスやキーボードによるインタラクションといった様々な機能を、マルチメディアコンテンツの制作にすぐに導入できるフレームワークとして提供している。その特徴は、プログラミング初心者でも習得が容易であることと、パワフルな画像処理や音声処理ができることにある。2007年頃から、世界中のメディアアーティストが利用し始め、「アルス・エレクトロニカ 2008」では、開発環境であるにもかかわらず、インタラクティブアート部門のHonorary Mentionsに選出された。
http://www.openframeworks.cc/

講座概要

1日目:
本講座のイントロダクションの後、講師と参加者が、各自の研究領域や活動、作品についてプレゼンテーションをおこなった。その後、「openFrameworks」の特徴や構造、使い方、c++のチュートリアルについてのレクチャーが実施された。

2日目:
参加者の研究領域や興味に応じ、グループを編成。「ライブパフォーマンス」「オーディオビジュアル」「コンピュータビジョン」「フィジカル・コンピューティングとほかのライブラリやプラットフォームとの連携」の4つのグループに分かれた参加者は、本講座における各自の最終課題を設定した。多様なスキルをもった参加者が介し、積極的な情報交換が生まれることで、「openFrameworks」の技術習得、課題に向けた各自の制作が進行した。

3日目:
「openFrameworks」と同じC++の画像処理ライブラリである「OpenCV」の紹介、「openFrameworks」を拡張する方法であるアドオンについてのレクチャーが実施された。

4日目:
最終課題として制作されたソフトウェアの成果発表と講評がおこなわれた。4日間という短い制作期間にも関わらず、多様なプロジェクトが発表され、「openFrameworks」の利便性やクリエイティビティが発揮される結果となった。講座終了後も、メーリングリストなどで参加者による作品や活動の報告、情報共有が継続されている。

講師

ザカリー・リーバーマン|Zach Lieberman
メディアアーティスト、プログラマー。アートの展覧会や教育の現場で活躍し、遊び、コミュニケーションの本質、可視/不可視の間の微妙な境界に迫るユニークな方法でテクノロジーを扱う。ジェスチャー入力や身体の拡張についての研究開発を取り入れたパフォーマンス、インスタレーション、オンライン作品等を制作。ゴラン・レヴィンとのコラボレーション作品「Remark」「Messa Di Voce」は国際的な展覧会で数多く展示。「Drawn」は、アルス・エレクトロニカとCYNETartで受賞。「Opensourcery」では、スペインの魔術師マゴ・ジュリアンと恊働し、オープンソース・ソフトウェアと伝統的なマジックとの組合せによって新しいトリックの領域を開拓。
http://www.thesystemis.com/

テオドア・ワトソン|Theodore Watson
アーティスト、デザイナー、実験者。好奇心や生き生きとした経験をデザインすることで、人々を遊びの精神へ駆り立てるような作品を制作。アーティスティックな表現のための新しいツール、実験的な音楽システム、身体を使った没入型のインタラクティブ環境の開発を行う。最近ではグラフィティ・リサーチ・ラボのレーザー・グラフィティ・システム「Laser Tag」や、没入型インタラクティブ・エコシステムの「Funky Forest」を制作。彼の作品はMoMA、テート・モダン、アルス・エレクトロニカ、サンダンス映画祭、Res Festなど世界各地で紹介されている。
http://www.theowatson.com/

主催:財団法人山口市文化振興財団
後援:山口市、山口市教育委員会
平成20年度文化庁芸術団体人材育成支援事業
企画制作:YCAM InterLab、山口情報芸術センター[YCAM]

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