吉報ふたつ

吉報、まずは、先日発売したばかりの本『MUSICS』、わずが1週間で重版になりました。われながらちょっと信じられない気持ちです。この手の音楽本としては異例の早さの売れ行きなのでは。なにぶん特殊音楽家の書いた特殊な本だと思われがちなせいか、一部の地域ではなかなか手にはいりにくいようですが、これで多少入手しやすくなるかもしれません。内容は、無論、特殊なものなどではなく、現場の実感をもとに、なるべくわかりやすいように注意して書いた文章です。この先、この本がどういうふうに読まれていくのか、そのフィードバックが自分にどう返ってくるのか、いまからとっても楽しみ。

ということで、初版本ほしい方は、お早めに。

そしてもうひとつの吉報。

山口YCAMでの展示作品『ENSEMBLES』、今日第一期分ほぼ完成しました。もう、最高にうれしい。言葉ではとても書けないくらいうれしいです。アンサンブルを組んでくれた共演のアーティストやミュージシャンのみなさん、YCAMのテクニシャンやスタッフのみなさん、ボランティアスタッフのみなさんには、本当にもうひとりひとりハグをしたくらい。みんなのおかげで素晴らしい作品ができました。山口に来てほぼ3週間、もうここにみんなと一緒にずっと住んでたいくらいうれしいです。YCAMにそのまま住んでしまいたくらいです。ああ、もうこのうれしさ、どう表現していいか、わかならないや。もうとりあえずは呑むぞ〜(下戸ですが

『without records』については先日書いたとおりで、青山泰知とボランティアスタッフ、YCAMスタッフの手によるまるでオーケストラのような作品に仕上がってします。仙台バージョンを見た人には、特に、その差異と進化のほどに驚くのではと思います。閉館後の図書館で見れる『filaments』もそうですが、5分とか10分さらっと見るようなタイプの作品ではなく、ゆっくりその場所にいて、集中するもよし、ただ風を感じるように、ゆったりといるもよし、そんな作品になっています。できることなら長い時間滞在してみてください。そうそう青山さんのリアルな気持ちも、彼のブログで読めます。そう、本当に楽しかったのだ。

もうひとつ、まだここにはほとんど書いていない『quartets』。この作品は、4月から木村友紀を中心に8人のミュージシャンの撮影と録音がはじまり、6月頭には平川紀道が一足先にYCAMに乗り込み、連日十数時間ほぼ休むことなく映像プログラムを実際の現場で組む作業を続け、ここにさらに6月後半には、ロンドンからベネディクト・ドリューが来日、壁面の映像の撮影作業にとりかかり、平川、木村、ベネディクト、そしてわたしの4人に加え特別参加の濱哲史、それにYCAMテクニシャンとスタッフ総出で総計8面の映像と8チャンネルの音を組む作業を続けてきました。で、昨日、やっとみなが満足行く到達点にまでいくことが出来ました。

ここに書いている文章だけだとちょっとわかりにくいかとは思いますが、従来のメディアアートとかサウンドインスタレーションから想像するようなものとは根本的に異なる作品です。正しくは、そうしたものの技術をふんだんに使っていはいますが、恐らく、これまで、そうしたものが目指していたものとは非常に異なる質を持った、しかし非常に完成度の高い作品です。驚くほど高度な方法で緻密につくられていますが、その一方で、即興演奏によるアンサンブルという本質から目をそらすことなく作られていて、本来なら共存しにくい両者が、強烈ないかたで共存しています。このへんは平川さんの独特の創作方法によるところが大きいのですが、詳細にはあえてふれずにおきます。とにかく現場でぜひぜひ体験してみてください。

『quratets』に限らず、『without records』にも『filaments』にも共通してるのは、支配することではなく、同期させるのでもなく、個々が、それぞれの個性のままどう空間をシェアしてアンサンブルを作ってくか・・・という点で、どの作品も長い会期を通じて、一度として同じ瞬間はありません。特に『quratets』はコンサートにように集中して長い時間聴いていただければ幸いです。それだけの緊張感と強度をもちつつも、その一方で、どこかで外に向かって扉の開いた作品でもあります。

オープンは7月5日。これをどう見てくれるのか、聴いてくれるのか、本当のアンサンブルはここからはじまります。山口、遠いし〜という声もちらほらですが、足はこぶだけの価値あるって、自信をもって思っています。8月23日には、これに加えさらにもうひとつ『orchestras』という作品もオープンします。夏休みを利用してぜひお出かけください。

7月5日にはオープンコンサートもあります。チケット残りわずかだそうです。こられる方はお早めに予約を。





写真は上から、
一ヶ月にわたって暗闇に篭って制作をつづけてほぼ完成にこぎつけた天才平川くんの安心しきった油断の笑顔














without recordsの中をあるくベネディクト・ドリュー
















撮影中の木村友紀















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