23日オープンに間に合うのか、大友!

という声もちらほらでてますが、スタッフともども不眠不休(正確には小眠不休)で制作にかかっております。絶対大丈夫! 気合! えい!


写真はorchestrasの心臓部分の鏡(といっても実際みてもらわないとなんのことやらですよね)の調整にかかる高嶺格と小西小多郎。200人もの人から録音した千数百ファイルを動かすシステムを7台のコンピュータを使って構築中の伊藤隆之と濱哲史。




右の写真は、今回新作になるHyper Without Record Playerを製作中の三原聡一郎。









23日オープニングのコンサートの準備も着々と。

第一部はなんと4時間にわたってYCAM全館、いたるところで、総勢100名近い人たちが演奏します。あるときは一緒に、あるときは完全にバラバラに。ONJOのメンバーもいれば、地元の小学生、神戸の音遊びの会のメンバー、京都のrewall、湯浅湾、牧野琢磨、小川紀美代、渡辺英貴、毛利悠子、五所純子・・・・・ほかにも多数。いったいだれがなにをやるのか、わたしもすべてを把握してるわけではありません。展示作品も並行して、上演しますので、もう、ゆるやかに、ほんとうに自由に、楽しんでください。こちらは入場無料です。

二部はorchestrasの展示されている巨大スペースのスタジオAでONJO+飴屋法水+宇野萬のセットです。こちらのほうは一部とはうってかわって閉鎖された空間の中に、巨大な円形に組まれた演奏家や舞踏家と、高嶺格わたしによる展示作品との共演になります。こちらは有料。

詳細はサイトのほうをぜひ!

二部のほうは会場に400人程度しか入れません。チケットのほう、どうかお早めに。油断してると、当日では入れなくなることもあるかもしれませんのでご注意ください。

8月23日のオープンで、展示作品4点がすべて見られるようになります。とはいえ、1期にオープンした「filamnets」と「without records」は多少の改変をへてますので、どちらもver2になります。ver1のほうは8月22日まで。それから「quartets」に関しては9月23日までになりますのでご注意を。それ以外の3作品は10月13日までひきつづきご覧になれます。

どの作品にも共通してるのは、じっくり最低でも40分以上、できれば1時間その場にいないと、全貌が中々みれない、聴けない仕組みになってることと、その上さらに会期中2度と同じシーンがないことです。このへんは僕等が普段やってる即興演奏の方法をそのまま展示に持ち込む・・・そんな風にイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。どれもがコンサートのような展示になってますので、こられる方はぜひゆっくり時間をかけて見てもらえるとうれしいです。特に23日のオープニングにこられる方は、この日だけだと、あまりに多くの人たちが錯綜して、純粋に展示作品だけを鑑賞するのはむずかしいかもしれません。翌日は、朝、早い時間からYCAMオープンしてますので、コンサートだけではなく、ぜひぜひ単独の作品にじっくり接してあげてください。

ENSEMBLESのタイトルどおり、今回展示の4作品、いずれも単にわたしの作品ってことではなく、名まえをあげきれないくらいの沢山の人々の手が加わる中で生まれた共同作品といってもいい作品です。会場にあるパネルには関わってくれた沢山の人たちの名前が刻まれていますが、単に名まえだけじゃなくて、作品そのものに、いろいろな人たちの汗が刻み込まれている作品です。このへんは来て、見てもらえればわかると思います。

日本で最大規模のメディアアートの牙城YCAMで、オレが一番やりたかったのは、しっかりと人の汗がしみついた作品をつくること・・・そんなふうに思ってます。野暮ったいこと言ってるかもしれませんが、そういうことが必要なんだって切実に思ってます。アカデミックでも、広告代理店の香りがするものでもなくて、自分自身のリアルな現実の中からの発想・・・という自分自身に課したテーマにどこまでせまれたか。せまれるのか。

オープンまでのこりの時間はあとわずか72時間。まだまだいけるはず。追い込めるだけ追い込むぞ!

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ワークショップ「こどものための即興オーケストラ」レポート

8月17日(日)快晴

今日は関連イベントの「こどものための即興オーケストラ」ワークショップが市内の湯田小学校の音楽室でおこなわれました。

参加者は小学2年生から中学生までの約30名。受付に来た子どもたちからの顔からはいまから何が始まるんだろうとちょっぴり緊張している様子や、期待に胸ふくらませてワクワクしている様子がうかがえます。

ちょっとずつ参加者が集まり始めた音楽室は、クーラーがついているにも関わらず徐々に熱気がむんむん。

14:00からワークショップ開始。はじめに教育普及の鎌田さんがあいさつをして、それから大友さんにバトンタッチ。

「みんな音はどうやって出ているか知ってる?」と大友さんが質問。「知ってるー、振動が伝わるんだよね」と授業で教えてもらったのか、子どもたちから答えが返ってきます。「音には波があって、いろんな高さの波があります。じゃあこの音は聴こえるかな?」周波数の帯域を変える機械(サンプラー)を使いながら、「この波が高かったり低すぎたら聴こえない場合もあるんだよ。みんなまだ若いから聴こえる幅が広いけど、大人になれば聴こえなくなる音もあります」。実際に高低それぞれの周波数を聴いてもらいながら、音の話に子どもたちの関心を誘います。

そしていよいよ楽器を使っての演奏が始まります。

家からもって来なかった子は、音楽室にあるいろんな楽器の中から選んで使います。ティンパニーや木琴や鉄琴、ドラム、シンバル、アコーディオンなどなど、思い思いの楽器を手に持つ子どもたち。早くも気分は高揚している様子。「じゃあさっそく鳴らして・・・」と大友さんが言うやいなや、みんなばらばらに無秩序に音を出し始めます。そんな子どもたちを制して、「まだ僕がはいって言うまで音をだしちゃあだめだよ。音を出す前の静かな時間、この何も音が出ていないということをまずは感じることが大事なんだよ」と話す大友さん。

大友さんの指揮にしたがって大きな音や小さな音、楽器にあわせて長めの音や短い音などを出していきます。

音を出すだけではなく、「聴く」ということも体験します。大きな銅鑼や、音が長〜くなる楽器を使って、「いまから鳴らす音が鳴り終わったと思ったら手を挙げて」。大友さんが鳴らした音にみんな耳を傾けます。手をあげるタイミングはばらばら。人によって感じ方が違うんですね。何人かに前に出てきてもらい、一回鳴らしてそれをじっと聴く、音が鳴りやんだと思ったらもう一回その楽器を鳴らしてまたそれが鳴りやむまで聴く、ということを繰り返します。みんな真剣に音を逃すまいと楽器に耳を近づけて聴き入ります。

「では、隣の人が音を出したら、自分も音を出してみて」。そうやって音を聴きながら演奏するということを何度か繰り返し体験していくうちに、最初はばらばらだったみんなの音が、徐々にひとつのまとまりのある音に変わっていきます。最後には子どもたちによるりっぱな楽団が誕生!

既存の曲を楽譜通りに演奏するということはしないで、即興で演奏するということ、しかもみんながばらばらに音を出し合うのではなく、いかに共有して音楽をつくりだしていくか、ということが体で感じられるワークショップだったのではないでしょうか?

さてさて、元気いっぱいわんぱくなこどもたち相手に負けじと普段以上に声を張り上げていた大友さん。ワークショップが終わった時には、子どもたちに生気をすべて吸い取られたかのようにぐったり?な様子。大友さん、お疲れ様でした。

8/23(土)14:00〜17:00に山口情報芸術センターの館内あちこちを使ってライブがおこなわれます。今回のワークショップに参加した子どもたちも何人か出演します。他にもプロアマ含め多数出演者あり、そんななかで子供たちがどんな即興演奏を聞かせてくれるのか、ぜひ聞きに来てください。

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ENSEMBLES展第2期オープン間近! 焦ってなんかないぞ〜

ウソ。焦ってます。

今回最大規模の作品「orchestras」を前に、もう強烈に追われまくって作品つくってます。追われているのは単に時間だけじゃない。精神的に追い詰められながら、オノレの創作能力のすべてをかけて、作ってる感じ。そして、なにより、早くから山口入りし作業をしている高嶺格の仕事のあまりの素晴らしさに、追いまくられているのであります。

高嶺さん、ほんとすごい。現代美術界若手ナンバーワンなどという世間のレッテルなんて元々信用なんてしてないけど、それでも彼がそう言われるの、今はものすごくよくわかる。単に作品が素晴らしいだけじゃなくて、そのつくる姿勢に、オレはもうとことん感服しております。素晴らしい。

だかしかし、コラボレーターとしては感服ばっかしていても仕方ない。彼の仕事に正面から拮抗するような音を作ってこそのアンサンブルズなのだ。8月リスボンから帰国してからは、もう全力で、この巨大展示にいどんでおります。

いったいどんな展示かってのは、まあとにかく見てください・・・としか言えないのだけど、今書けることを書かせてもらうなら、上空には数百点の廃材、70チャンネルの学校放送用やら昔のステレオの家具調スピーカー、メガフォンから最高級のPAスピーカーまで、ありとあらゆるスピーカーたちもつるされていて、この70個のスピーカーからは、7台のコンピュータを使ってプロアマ200人以上の人から録音した1200ファイル以上の演奏や歌、声の音源が様々な仕組みで、あるときはランダムに、あるときはコンポーズされて流れる上に、簡単なロボットのような機械で吊るされている廃材もぶっ叩いて音を出す・・・・・・・ううううううう〜〜〜〜ん、自分でも何書いてるんだか、これじゃわlらね〜よって声が聞こえてきそうだ。

さらに高嶺流迷路というか、アングラ秘宝館かも・・・みたいな地下の部屋では、ギターが何台も大爆音でフィードバックしたり、ミラーボールがまわったり、おかしな楽器の部屋があったり、これまたプロアマ問わない100人以上の人たちの唄や演奏がワイヤレスのヘッドフォンから流れる仕組みで・・・・・うううううう〜〜〜〜〜ん、やっぱ何いってんだかさっぱりわからない。でも、このわからなさ加減のパワーと、莫大な未整理の情報量がこの作品の肝・・・ってかオレや高嶺さんそのものなのだ。

とにかくですね、そんなもんを高嶺さんや、もうおなじみのYCAMの強力スタッフ、サウンドテクニシャン伊藤隆之さん、西村悦子さん、舞台美術の宇野三津夫さん 岩田拓朗さん、大脇理智さん、照明の西田昌一さん 高原文江さん 金築浩史さん、三原聡一郎さん、そして高嶺組の重鎮小西小多郎さん、大友組の濱 哲史やらwithout recordsチーム・・・・ほかにもまだまだいるのですが、そういった人たちが束になって、昼夜ぶっとしで働いて滅茶苦茶やってくれているのです。

もう日記かいてるどころのさわぎじゃないんですが、一部で好評、大部分で不評の連載マンガのほうも、全然書けないし、でも、今回は打ち上げも自重して、でもってひたすら音に向かっております。ほんと、ほんと。今回ばかりは打ち上げはオープンあと。

いやね、日記はどうしたのだ・・・YCAMの仕事ちゃんとやってるのかってメールがちらほら来てるのだ。でもって今度の2期オープンのこと、もう少し説明してくれって要望も来てるのだ。でもって、書かねばならぬのも充分承知してるんですが、今は世界タイトルマッチを目前にした矢吹ジョーみたいなかんじなんす。ウソ・・・いや、ちょっとほんとかな、それともウルフ金串くらいかな・・・いや、うどん食うの我慢してるマンモス西くらいかも。

8月23日2期オープン、まじですごいことになりますよ。詳細は2日以内には書きます。

ちなみに1期オープンした「without records」は夏休みの子供攻撃にあって、惨憺たる状況だったのを、先日なつかしのボランティアスタッフが再集合してくれて、修復、それどころかヴァージョンアップしました。青山さん、ずたぼろになったプレイヤーたち、元気に動いてますよ。みんな青山さんのこと懐かしがってますよ〜。

ということで天才テクニシャン伊藤さんがものすごい目をして作業をしてる脇で、このブログ書いてます。そろそろ作業にもどります。まだまだ深いところにいくのだ。

写真は上空に吊るされる前の廃材を前に、自信満々狂気の笑顔の高嶺さん、つるされた廃材の背後で頭をひねる伊藤さん、そして、復活したwithout records ver2

Filed under: 大友ブログ — otomoycam 8:06 PM  Comments (0)

any vol.65

YCAMで配布している情報誌「any」が新装刊。
大友さんのインタビューがたっぷり載っています。

any vol.65 2008年夏号(8・9月号)
■特集
複数の人・音・記憶が出会い、響きあう
「大友良英 / ENSEMBLES」展
大友良英インタビュー

YCAMにお越しの際は、館内に置いてありますので、ぜひご覧ください。

また、下記よりダウンロードしてご覧いただけます。
any vol.65

Filed under: From YCAM — otomoycam 8:24 PM  Comments (0)

感謝、感謝、感謝!!!!

大友本人で〜〜す。ENSEMBLES無事オープンしました!
YCAMオープニングコンサートにきてくださったみなさん、本当にありがとうございました。チケット取れなかった一部のみなさん、ごめんなさい。特設の席をつくってもらったりして、なるべく入れるようにしたのですが、予想をはるかに超えて盛況でした。コンサートのほうは、もう言葉もないくらい満足。みな素晴らしい演奏でした。

展示作品もおかげさまで好評で、ほっとしております。本音を言えば、どの作品も、企画段階で想定したいたものをはるかに凌ぐ作品になっていて、自信と確信を持って、いいものが出来たとおもっております。単にいいものというだけじゃなく、僕等がYCAMのスタッフとみなでつくる一期一会の機会が作り出した、これまでに、まだどこにもなかったような、奇跡のような作品になってると、今はもしかして出来たばかりで気分がハイになってるだけかもしれませんが、でも、本当にそういうふうに思っています。すごい作品です。

今回は『ENSEMBLES』というタイトルが示すとおり、何人もの人たちが一体となって作り上げた作品で、わたし個人の仕事ではなく、完全な共同作品、音楽で言えばいくつものバンドが同時進行で作品をつくった感じです。それぞれの作品を言葉で説明すること、もちろん出来なくはありませんが、でも、なにより、ぜひぜひ現場に行って、実際の空間を体験してみてください。しかも出来ることなら長い時間、コンサートを見るように、作品に接してみてください。どの作品も、ゆったりとした時間の中で見るように出来ています。正確には、ある程度の時間つきあわないと、見えてこない、聴こえてこないように出来ています。そのぶん、聴こえてきたとき、見えてきたときの見え方、聴こえ方は、さらっと接したものとはまったく異なるものになるのではと思います。
わたしの希望を言ってしまえばそれぞれ最低でも40〜50分。本当ならコンサートを聴くように、1時間半でも2時間でも居てほしいなと思っております。

この先さらに高嶺格さんと『orchestras』という巨大作品を制作、これは8月23日に発表の予定で、この日にはONJOや飴屋法水さん、音遊びの会、宇野萬さんほか多数の演奏家が参加してのオープンコンサートもあるので、多分この日を目指して遠方から来る方多いと思います。そういう方にひとつだけアドバイスすると、出来ることなら、作品をじっくり見る日を前後にとっておいてください。23日は昼間から夜まで全館いたるこころで演奏がくりひろげられているので、個々の作品をじっくり見ることは不可能です。むしろYCAM全体が祝祭空間のようになっていて、それを楽しむ感じになると思います。

なので、たとえば前日に『quartets』『filaments』『without records』をじっくり見ていただいて、23日はオープンイベントを。で、翌日は『orchestras』と23日からバージョンの変わる『filaments2』をゆっくりみたいなかんじで。そうそうオオヤケにはアナウンスしていませんが、今やっているの『filaments』は8月22日までで、23日からはバージョンが変わり『filaments2』になります。『without records』も実は日々バージョンが変わっていくので、7月に見たものと8月、あるいは9月、10月では、多分、結構違うはずです。そいう意味での長いスパンの楽しみ方も可能です。

オープンコンサートのあとは、YCAMスタッフやボランティアチーム、出演のミュージシャンやアーティスト、そしてかけつけてくれた友人知人たちとみなで打ち上げ。今回展示準備期間中も何度となく打ち上げにいきましたが、この日の打ち上げは、わたしの人生の打ち上げ史上にのこるくらいの、オープニングコンサートの幸せな気持ちがそのまま続いているような素敵な打ち上げでした。このまま本当に山口に住みたいです。
翌日にはおもわず不動産屋を見てしまったくらい。もうYCAMに就職させてくださ〜〜〜い。

本当に感無量。YCAMのみなさん、アーティストやボランティアのみなさん、ココロから感謝しております。

とはいえ、ここで油断してはならず。まだ2期オープンに向けて高嶺さんとのorchestrasの制作がまっております。こちらも1期に負けないものにするべく、感張ります!


photo: Ryuichi Maruo

Filed under: 大友ブログ — otomoycam 7:57 PM  Comments (0)

吉報ふたつ

吉報、まずは、先日発売したばかりの本『MUSICS』、わずが1週間で重版になりました。われながらちょっと信じられない気持ちです。この手の音楽本としては異例の早さの売れ行きなのでは。なにぶん特殊音楽家の書いた特殊な本だと思われがちなせいか、一部の地域ではなかなか手にはいりにくいようですが、これで多少入手しやすくなるかもしれません。内容は、無論、特殊なものなどではなく、現場の実感をもとに、なるべくわかりやすいように注意して書いた文章です。この先、この本がどういうふうに読まれていくのか、そのフィードバックが自分にどう返ってくるのか、いまからとっても楽しみ。

ということで、初版本ほしい方は、お早めに。

そしてもうひとつの吉報。

山口YCAMでの展示作品『ENSEMBLES』、今日第一期分ほぼ完成しました。もう、最高にうれしい。言葉ではとても書けないくらいうれしいです。アンサンブルを組んでくれた共演のアーティストやミュージシャンのみなさん、YCAMのテクニシャンやスタッフのみなさん、ボランティアスタッフのみなさんには、本当にもうひとりひとりハグをしたくらい。みんなのおかげで素晴らしい作品ができました。山口に来てほぼ3週間、もうここにみんなと一緒にずっと住んでたいくらいうれしいです。YCAMにそのまま住んでしまいたくらいです。ああ、もうこのうれしさ、どう表現していいか、わかならないや。もうとりあえずは呑むぞ〜(下戸ですが

『without records』については先日書いたとおりで、青山泰知とボランティアスタッフ、YCAMスタッフの手によるまるでオーケストラのような作品に仕上がってします。仙台バージョンを見た人には、特に、その差異と進化のほどに驚くのではと思います。閉館後の図書館で見れる『filaments』もそうですが、5分とか10分さらっと見るようなタイプの作品ではなく、ゆっくりその場所にいて、集中するもよし、ただ風を感じるように、ゆったりといるもよし、そんな作品になっています。できることなら長い時間滞在してみてください。そうそう青山さんのリアルな気持ちも、彼のブログで読めます。そう、本当に楽しかったのだ。

もうひとつ、まだここにはほとんど書いていない『quartets』。この作品は、4月から木村友紀を中心に8人のミュージシャンの撮影と録音がはじまり、6月頭には平川紀道が一足先にYCAMに乗り込み、連日十数時間ほぼ休むことなく映像プログラムを実際の現場で組む作業を続け、ここにさらに6月後半には、ロンドンからベネディクト・ドリューが来日、壁面の映像の撮影作業にとりかかり、平川、木村、ベネディクト、そしてわたしの4人に加え特別参加の濱哲史、それにYCAMテクニシャンとスタッフ総出で総計8面の映像と8チャンネルの音を組む作業を続けてきました。で、昨日、やっとみなが満足行く到達点にまでいくことが出来ました。

ここに書いている文章だけだとちょっとわかりにくいかとは思いますが、従来のメディアアートとかサウンドインスタレーションから想像するようなものとは根本的に異なる作品です。正しくは、そうしたものの技術をふんだんに使っていはいますが、恐らく、これまで、そうしたものが目指していたものとは非常に異なる質を持った、しかし非常に完成度の高い作品です。驚くほど高度な方法で緻密につくられていますが、その一方で、即興演奏によるアンサンブルという本質から目をそらすことなく作られていて、本来なら共存しにくい両者が、強烈ないかたで共存しています。このへんは平川さんの独特の創作方法によるところが大きいのですが、詳細にはあえてふれずにおきます。とにかく現場でぜひぜひ体験してみてください。

『quratets』に限らず、『without records』にも『filaments』にも共通してるのは、支配することではなく、同期させるのでもなく、個々が、それぞれの個性のままどう空間をシェアしてアンサンブルを作ってくか・・・という点で、どの作品も長い会期を通じて、一度として同じ瞬間はありません。特に『quratets』はコンサートにように集中して長い時間聴いていただければ幸いです。それだけの緊張感と強度をもちつつも、その一方で、どこかで外に向かって扉の開いた作品でもあります。

オープンは7月5日。これをどう見てくれるのか、聴いてくれるのか、本当のアンサンブルはここからはじまります。山口、遠いし〜という声もちらほらですが、足はこぶだけの価値あるって、自信をもって思っています。8月23日には、これに加えさらにもうひとつ『orchestras』という作品もオープンします。夏休みを利用してぜひお出かけください。

7月5日にはオープンコンサートもあります。チケット残りわずかだそうです。こられる方はお早めに予約を。





写真は上から、
一ヶ月にわたって暗闇に篭って制作をつづけてほぼ完成にこぎつけた天才平川くんの安心しきった油断の笑顔














without recordsの中をあるくベネディクト・ドリュー
















撮影中の木村友紀















Filed under: 大友ブログ — otomoycam 11:08 AM  Comments (0)

第5回 アンサンブルくん

Filed under: 未分類 — otomoycam 9:52 PM  Comments (0)

without records YCAMバーション

ども、大友本人でーす。
山口に来て12日目。YCAM『ENSEMBLES』展、第一期オープニングに向けて、急ピッチで作業すすんでいまーす。
今日は沢山のボランティアスタッフ達とつくってる『without records』の話を。

『without records』もともとは2005年、京都のshinbiギャラリーで、わずか20台のターンテーブルではじまりました。このときはほとんどの作業はわたしひとり。で制御部分に関しては音響美術家の吹田哲次郎さんとキュピキュピの江村耕市さんに手伝ってもらいました。
これをもとに飛躍的に進化させたのが、美術家青山泰知さんと組んだのが2007年の仙台メディアテークの66台のバージョンです。このときの様子はyoutubeで「without records」で検索すると見れます。
今回のここYCAMバージョンは、それをはるかに越えたもになりそうです。単に台数が120台になったというだけのことではなく、YCAMのテクニシャン伊藤隆之の手により制御の機構も大幅にアップしてオーケストレーションともいえそうな緻密なコンポジションを実現しつつあって、さらに、それにあわせるかのように、青山さんのアートデレクションもさえわたっております。今回あらたに導入したスタンドや、照明、複雑な配線等々、すべてはYCAMスタッフ総動員のたまものです。こうして少しづつ形になる展示を見ながら、音を出しながら、自分でもうれしくて、面白くて連日ドキドキしてます。

が、しかし、なによりも今回すごいのは、言葉を失うくらい濃い30名を越えるボランティアメンバー達の活躍です。何が濃いって、なんというか、あまりにも個性的。え〜と、どう個性的かは、ちょっと一言では書けない感じですが、ってか、とてもオオヤケには書けないくらいのものすごさですが、いや〜、世の中にはいろんな人たちがいてびっくりっす。みなさん、安心してください。相当個性的でも、世の中大丈夫。何かを誰かと一緒につくろうって意思さえあれば、本当にどんだけ個性的でも、どんだけ普段実社会で浮いていようと大丈夫・・・なんて書いたら怒られるかな。おまけに、みんな毎日深夜まで怒涛の勢いで楽しく打ち上がってるし・・・。その上YCAMの某山城さん(仮名)がどっかんどっかんあおりまくるし。打ち上げ好きのオレが、まるっきりついてけないくらいですから。

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青山さん
photo: Otomo Yoshihide

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伊藤さん(YCAM)
photo: Otomo Yoshihide

まあ、そんな部分はともかく、彼等が加工した百数十台のターンテーブルが、その濃い個性を反映してか、どれも実に面白い。本当に個性的な素晴らしい音をだしております。それだけでも、十分成り立つくらい。でも、それらが漠然と音を出すわけではなく、YCAMならではのシステムを使って、2度と同じ瞬間のないオーケストレーションをこれから3ヵ月半の間、奏でます。このへんはぜひぜひ、実際に現場で体験してください。仙台バージョンとの大きな違いは、個々のターンテーブルの個性とともに、この進化したコンポジションにあります。

オープンまであとわずか数日。ほかにも『quartets』や『filaments』の作業も同時進行で着々とすすんでおります。このへんについてはまた後日書きます。たくさんのメンバー達と、アンサンブルズのタイトルのとおり、従来の展示とは一味ことなる独特の共同作業をするなかで生れつつある作品、ぜひぜひお楽しみに。

写真はいずれも『without records』展示準備中のYCAMホワイエにて。左から青山泰知、伊藤隆之、そしてめっちゃ濃いボランティアメンバーやYCAMスタッフ達(なぜか一楽さんや平川くんの姿も)。みんなものすごくいい顔してます。この感じが、きっと作品に反映されてくることでしょう。いいものになりそう!


ボランティアメンバー photo: Ryuichi Maruo

Filed under: 大友ブログ — otomoycam 2:33 PM  Comments (0)

第4回 アンサンブルくん

Filed under: 連載 アンサンブルくん — otomoycam 6:29 PM  Comments (0)

ワークショップ2日目


改造したプレイヤー


大友さん、真剣にチェック中

参加者のみなさんは早くも打ち解けて、とても楽しそうな雰囲気。会場からは、話し声とともに1日目よりも大きな音が鳴り響きます。目の前のプレイヤーの音に集中し、自分なりに変化をさせていくその様子は、まさに各々の楽器をつくっているようです。
気に入った音ができたら、大友さんや青山さん、ほかの参加者に聴いてもらい、ビジュアルや音についての意見をききます。
そうした過程を経て、満足いく楽器へと仕上がると「○○(参加者の名前)1(制作した順)号」と命名され、プレイヤーの展示準備が整います。参加者の音/楽器へと変化した100通りの中古のポータブルレコードプレイヤーの音色が、会場でどんなアンサンブルを生み出すのか、もう本当にわくわくします。

(下記、もちろんここで文字にして書くのは不可能な音なんですが、想像の材料にしてください。)
「シューン、シューン、ガ、キューン」
「サ〜〜〜〜〜シュルルル、サ〜〜〜」
「シーーーーーーシュシュシュシュー」
「パヒュー〜〜*◉_◉/**×□□×○×ー」
というのが、100台並ぶんです!

…明日は、プレイヤーを会場へと配置します。

Filed under: From YCAM — otomoycam 9:36 PM  Comments (0)