人類の歴史とともに時計は進歩し、その精度は高まってきました。かつて地球の自転を利用した時計が作られ、やがて天体の運動を利用した時計を経て、現在、最も正確な時計は水素原子を利用した原子時計であるとされています。その精度は、1000万年たってようやく1秒ずれるほど、という正確さです。人間はどこまで正確な時計を作ることができるのでしょうか?そして時間はどこまで正確でありえるのでしょうか?重力場の中では客観的で一様な時間というものは存在しません。同じ時計でも地球という重力場の中心近く、つまり低いところに置けば進み方が遅くなるのです。いまや超高精度の原子時計を使って、高山と低地では時計の進み方が違うという事実を実験で確かめることもできるようになりました。もし重力が途方もなく強いところへ下りていったらどうなるでしょう。時計の進み方はますます遅くなり、あるところで全く止まってしまう。そここそ究極の重力源、ブラックホールの表面なのです。
(藤沢健太)
[サイエンティフィック・アドバイザー]
藤沢健太/山口大学時間学研究所
[協力]
アジレント・テクノロジー株式会社、国立天文台
■アドバイザーからのブックガイド
「図解雑学 時間論 図解雑学シリーズ」二間瀬敏史著(ナツメ社)
「図解雑学 重力と一般相対性理論」二間瀬敏史著(ナツメ社)
「天体の位置計算 増補版」長沢 工著(地人書館)