私たちが知っている丸い地球が、足下に広がる大地と一致したことはあるだろうか?私たちは丸い地球の上で生活しているにも関わらず、それを感じることはできない。この作品はそれを可能にするものである。地面越しに地球を指差すと言う体験には、体験者の意識に何らかの変化を与える可能性がある。たとえば、地面越しにイラクを指差すことができれば、ニュースの見え方が変わるかもしれないし、旅先を指差すことができれば、旅行前の楽しみが増えるかもしれない。しかし、この作品はなにかを感じる事を強制するものではない。この作品は純粋なアトラクションとして楽しめるほど軽快なインタラクションをするし、大陸の輪郭と赤道を含む緯線・経線、主要都市の情報しか保持していないのである。体験者がその先に何か感じるとすれば、それは各々の体験者自身に委ねられている。この作品は、ただひたすら「非日常的スケールの地球」と「体験者の身体」の物理的関係を明確にするものである。
(平川紀道)