この場所で昨日鳴っていた音が、今日同じ時間に聴こえるとしたら、音による地層を体感できるのではないか、という考えに基づく。昨日、この場所で鳴っていた音が、足下から聴こえてくる作品。この録音と再生のプロセスを繰り返すことによって、過去の音はどんどん深い層に埋もれていく。昨日そこにいた誰かの足音や喋り声が、下のフロアから聴こえてくるかもしれない。上を向いて話せば、明日そこにいるかもしれない誰かに、語りかけることもできる。過去は足下にあり、未来は見上げたところにある。私たちが過ごしているのは、そのいくつもの層のうちの、ほんの1枚に過ぎないのだ。
(中居伊織)